賃貸管理ビジネス

月刊不動産2026年2月号掲載

ゼロから管理拡大期の人的資源の考え方

代表取締役 今井 基次(みらいずコンサルティング 株式会社)


Q

 当社は、管理戸数が約700室の不動産会社です。今後1,000室を目指して拡大を進めたいと考えていますが、人員をどのタイミングで増やすべきか、正社員・パート・外注のいずれを選ぶべきか悩んでいます。固定費を増やしすぎると利益を圧迫しますが、人手が足りないと業務品質が下がるおそれもあります。拡大期における最適な人員体制はどのように考えるべきでしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  •  管理拡大期は、固定費を急増させずに柔軟に人員を補うことが重要です。700室規模では、まずパートや外注を活用し、定型業務や現場対応を切り出すことで、正社員がコア業務に集中できる体制を整えるのが現実的です。ITツールを導入しても運用が定着しなければ効果が出にくいため、システム活用と人材教育を並行して進めましょう。1,000室が見えてきた段階で、正社員を中心とした組織体制へ移行し、リーダー層の育成や権限移譲を進めることが、持続的な拡大につながります。

  • 管理拡大における人員計画の重要性

     管理戸数の拡大に伴い、どのタイミングでどのように人員を増やしていくかは、管理会社にとって極めて重要な経営課題です。管理戸数が増えるにつれて業務量も増大しますが、一方で、管理料単価には限界があるため、人件費の増加がそのまま利益を圧迫してしまう構造にあります。そのため、正社員・パート・外注といった人的リソースをどう組み合わせるかが、拡大期を乗り越える上での大きな鍵となります。
     管理業務は、営業・事務・現場対応など多岐にわたりますが、特に拡大期には営業職への負荷が集中しやすく、事務や現場対応の人員が後回しになりがちです。結果として、契約や入居付けは進むものの、管理実務の体制整備が追いつかず、社内全体のオペレーションが滞るケースも見られます。こうした状況を防ぐためには、拡大段階に応じて柔軟に人的リソースを再配分する考え方が求められます。
     近年では、不動産テクノロジーの導入により、管理業務の効率化が進んでいます。入居申込みのオンライン化、契約書の電子化、入金消込や点検業務の自動化などにより、以前に比べると必要な人手は確かに減っています。しかし、システムを導入しただけで効果が発揮できるわけではなく、運用のノウハウや担当者の理解が伴わなければ、かえって負担が増すこともあります。システム投資に偏りすぎず、人的資源の育成と並行して進めることが重要です。

  • 雇用形態別のメリットとデメリットを踏まえた選択

     人的資源を検討する上で、まず考えたいのが正社員・パート・外注の使い分けです。それぞれに明確なメリット・デメリットがあり、最適なバランスは、会社の成長段階や業務内容によって異なります。
     正社員を採用するメリットは、将来的な管理拡大に備えて人材を育成できる点にあります。長期的な戦力としてスキルアップを図ることで、会社全体の成長にもつながります。また、優秀な社員が増えることで社内の雰囲気が明るくなり、チームの結束力も高まります。
     一方で、社会保険料を含む人件費負担は重く、固定費化することで経営リスクが増すという課題もあります。さらに、スキル次第では戦力化までに時間を要する場合もあり、退職による人員ロスが常に付きまとう点にも注意が必要です。
     パート社員は、正社員に比べて人件費を抑えられることが大きな利点です。繁忙期に合わせて勤務時間を調整できるため、季節変動のある賃貸管理業には相性が良い働き方といえます。また、仕事を切り分けて任せられることで、本人のモチベーション次第では高い生産性を発揮することもあります。ただし、専門性の高い業務には限界があり、スキルや責任範囲が曖昧なままでは戦力にならないリスクもあります。特に、緊急対応やトラブル処理など「肝心な時」に頼れない体制になると、正社員に負担が集中してしまうこともあります。
     外注は、すでに専門業務に精通した人材を確保できる点が魅力です。繁忙期や一時的な案件増加に柔軟に対応でき、必要な分だけコストを支払う変動費型であるため、固定費を抑えたい成長期の企業にとって有効な手段です。退職リスクもなく、契約ベースで業務を委託できることから、特定業務(例:巡回・清掃、入居者対応、出納業務など)を切り離すことで、社内のリソースをコア業務に集中させることができます。一方で、単価はパートよりやや高くなり、また外注先の担当者が自社社員のような主体性を持って動くことは難しいため、品質管理やコミュニケーションのコストが発生します。

  • 拡大期を支える人材戦略と組織づくり

     このように、それぞれの雇用形態には一長一短があり、「誰を・どのポジションに・どの段階で」配置するかが重要な判断となります。管理戸数が数百室規模の段階では、経営者や幹部が現場を支えながら、パートや外注で業務を補う体制が現実的です。しかし、1,000室を超える頃には、業務フローや責任分担を明確にし、正社員を中心とした安定した組織運営が求められるようになります。
     また、人的資源の問題は「採用」だけでなく「定着」にも関わります。せっかく育てた社員が短期間で辞めてしまえば、採用コストと教育コストが無駄になります。仕事のやりがいやキャリアパスを示すとともに、繁忙期の負担をチームで分散できる仕組みをつくることが大切です。パートや外注の協力を得ながら、正社員がより戦略的な仕事に集中できる環境を整えることで、拡大期の成長を持続可能なものにできます。
     不動産管理業は、季節変動や突発的なトラブル対応など、業務の波が大きい業界です。だからこそ、繁忙期だけに合わせた採用ではなく、年間を通じた業務バランスを見据えた人材配置が求められます。正社員・パート・外注を組み合わせて柔軟に対応しながらも、最終的には「誰が・何のために・どこまで責任を持つか」という点を明確にすることが、管理拡大期を安定的に乗り切るためには重要であると考えられます。

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