賃貸管理ビジネス

月刊不動産2022年5月号掲載

「入居率至上主義」で、確実な戸数増加を目指す

今井 基次(みらいずコンサルティング株式会社 代表取締役)


Q

繁忙期でも、以前のように仲介件数が伸びませんでした。会社の売上げを安定させるために、管理戸数の拡大を考えています。一気に拡大をしていきたいのですが、営業エリアは築年数が古いものも多く、仮に管理を受託しても入居率の大幅アップは期待できない可能性があります。従業員には、戸数拡大を目標に営業をするように言っていますが、受託しても決められないことが想定できるのか、思うように営業活動に時間を割いてくれません。何か良いアドバイスをいただけないでしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 回答

     管理戸数を増やしていくことは、会社の経営としても安定化を図ることができるため、大賛成です。しかしながら、とにかくどんな物件でも増やす「戸数至上主義」では、戸数は増加しても入居者決まらない物件ばかりが増え、オーナーへの提案がおろそかになり、入居率が下がっていく一方です。せっかく管理を任せていただいても、空室が増えていけば、オーナー満足度は下がり、管理離れが起こる可能性があります。意識すべきは入居率の高さであり、管理戸数の多さではありません。「入居率至上主義」を理念に掲げ、従業員へのインプットをしていきましょう。

  • 管理戸数拡大は「石の上にも3年」

     石の上にも3年ということわざがありますが、それと同様に管理戸数の拡大は、時間とコストがかかることを覚悟しなければなりません。
     これまでも、管理を増やしたくて何年かかけたけれど思うように増えず、途中でやめてしまう会社をたくさん見てきました。でも仮に管理戸数が急拡大をしたとしても、簡単に受託できる物件は、募集に苦戦するものが多いため、入居率が追いつかず、結局管理離れを起こしてしまうということもよくあります。
     そもそも、現状の管理で満足をしていれば、管理を他業者に任せることはよほどの理由がない限りしないでしょう。管理を他社に委託する一番大きな理由は、「入居者を決めてくれない」ことですが、決めてくれそうだからと思い切って管理会社を変えても、結局はさほど変わらないとなれば、オーナーのマインドは一気に冷めてしまいます。管理戸数至上主義になることで、物件の総戸数が増えるものの、空室物件のほうが受託しやすいのですから空室率も同じように増えてしまうのです。

  • 空室物件を増やすことのコスト

     管理戸数が増えれば、オーナー満足度が上げられると思いがちですが、実際は思っているように生産性が上がらず、そうならないことが多いようです。理由はさまざまですが、たとえば空室が増えすぎて、管理物件に目が行き届かず、現場の清掃がおろそかになり始めます。空室対策の基礎中の基礎は、空室の窓あけ換気や、集合ポストのチラシ撤去、目につく共用部分の拭き掃除などですが、これらは、外部に委託して機械的にこなす定期清掃では賄うことができません。
     清掃が行き届いていない物件をいくら案内したところで、空室物件は決まりません。さらに空室が多くなれば、管理会社は無駄なコストを払うことになるのです。現場への巡回と維持管理コスト、募集中物件のネット上への掲載コスト、ネット募集の維持管理コスト、空室一覧の維持管理コスト、決まらなくとも営業をし続けるための人件費……などなど、空室であっても管理料はもらえない割に、実は見えないコストもかかり続けてしまうのです。
     さらに、営業エリア内で自社管理物件が増え続けた場合、同一エリア内で限られた顧客を奪い合うカニバリゼーションを起こしてしまうのです。入居者が決まらないオーナーとしてみれば、あっちの人の物件ばかり決めて、うちの物件はいつまでたっても決めてくれないとなるのです。狭いエリアで管理物件の空室が増えれば、オーナーの優劣をつけるわけではなくとも、それぞれの利益を争奪することになるのです。
     管理を増やし続けるには、それらを決めるだけの集客力も問われるのです。

  • 高入居率が生み出すパフォーマンス

     一方、管理戸数が少なくとも入居率が高ければ、現場の換気や募集など、無駄なコストをかけなくてよいのです。高い入居率を維持できれば、新たなる管理委託の相談や、管理物件の売買仲介の相談など、より高い生産性の業務に従業員の時間を割けることになるのです。また、オーナーも、過剰な広告料を払わないと決めてもらえないなどのストレスを抱えなくてもよいため、管理会社への顧客ロイヤルティ(会社のサービスに対して持つ信頼や愛着心)が高まり、オーナーと従業員との関係も良好に保てます。これにより従業員ロイヤルティ(従業員が務める会社に対する信頼や愛着心)が高まることになるので、「大切なオーナーの物件を管理している」という高い意識はさらなる管理拡大につなげることができるのです。管理戸数を拡大すれば、管理戸数ランキングなどメディアへの露出が見込めるため、急いでしまいがちです。しかし管理戸数は、良い管理をしていることで既存オーナーから質の高い口コミが広がり、さらに適切なマーケティングにより、増加していきます。無理に管理拡大を進めなくとも、管理の質と入居率を高めることができれば、自ずと管理戸数は増大するのです。
     何よりも高い入居率を維持し続けることは、自社の生産性が上がることにつながり、従業員のパフォーマンスを大幅に向上させるのです。戸数至上主義よりも入居率至上主義に意識を向けることが、時間はかかっても高入居率で質の高い管理会社となることができるのです。

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