法律相談

月刊不動産2004年2月号掲載

雨漏りの瑕疵担保責任

弁護士 渡辺 晋(山下・渡辺法律事務所)


Q

平成13年4月に新築の一戸建て建売住宅を購入しましたが、平成15年の秋ころ雨漏りが始まりました。売主に補修を求めたところ、売買契約書には2年間しか瑕疵担保責任を負わないとする特約があるという理由で補修を断られました。売主に補修を求めることはできないのでしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  •  住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、「品確法」といいます)により、売主は10年間瑕疵担保責任を負いますので、引渡しから2年以上経過していても、雨漏りのする部分について補修を求めることができます。雨漏りの補修に関しては、瑕疵担保責任を2年以内に制限する特約には効力がありません。
     物や権利に関する傷や欠点を瑕疵(かし)といいます。売買契約においては、売買の目的が本来有するべき品質や性能を備えていないことが瑕疵となります。雨漏りのする建物を売ったことは、瑕疵のある建物を売ったことになります。売買契約の目的物に瑕疵がある場合に売主が負うべき責任を瑕疵担保責任といいます。
     民法では、売主の瑕疵担保責任に関し「買主が事実を知りたる時より1年内に之を為すことを要す」(民法570条、566条)と規定されていますが、民法上は瑕疵担保責任期間を制限する特約も有効です。
     他方宅地建物取引業法によれば、瑕疵担保責任を引渡日から2年未満とする特約は無効ですが(宅地建物取引業法40条1項・2項)、引渡日から2年以上とする特約の効力は認められます。そのため宅地建物取引業者が売主となる売買契約には、通常瑕疵担保責任を2年とする特約条項がつけられています。
     品確法ができる前には、多くの場合に、引渡日から2年を経過するとどのような瑕疵があっても瑕疵担保責任を追及することができなくなっていました。
     しかし一般市民にとって、住宅は生活の基盤であり、たいへんに高価な買物です。住宅の基本的な構造部分についてまで、瑕疵担保責任を2年以内に限定するのは、あまりにも短すぎるのではないかと考えられるようになりました。そのため、品確法により、新築住宅の売主は、建物の基本的構造部分については、必ず10年間瑕疵担保責任を負うこととされました(品確法88条)。
     品確法は、平成11年6月に成立、平成12年4月に施行されています。平成12年4月以降に売買契約が締結された新築住宅には、10年間の瑕疵担保責任が強制されることになりました。
     この品確法の規定は、住宅に関するすべての瑕疵に適用されるのではなく、住宅の瑕疵のうち、「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」の瑕疵に適用されます(品確法88条、87条)。「構造耐力上主要な部分」とは、基礎、基礎ぐい、壁、小屋根、土台、筋かいなどであり、「雨水の浸入を防止する部分」とは、屋根、外壁、これらの開口部に設ける戸、枠その他の建具、雨水を排除するため住宅に設ける配水管のうち、住宅の屋根若しくは外壁の内側又は屋内にある部分です(住宅の品質確保の促進等に関する法律施行令6条)。雨漏りについては、雨水の浸入を防止する部分のいずれかに瑕疵があるものとして、補修を請求することができます。
     品確法は新築住宅に限って適用されます。新築住宅とは、新たに建設された住宅で、まだ人の居住の用に供したことのないもの(建設工事の完了の日から起算して1年を経過したものを除く)をいいます(品確法2条2項)。購入前に他人が居住していた場合や、他人が居住していたことはなくとも竣工後1年を経過した後の住宅に関しては、品確法の適用は受けられません。
     売買契約における売主の負担するべき担保責任に関しては、民法上は損害賠償が定められているだけなので、新築住宅について修補の請求ができるかどうかには争いがあります。この点についても、新築住宅の基本的構造部分については品確法により修補請求が認められることが明文化されました。
     なお品確法は請負契約にも適用があります。したがって建売住宅だけでなく、注文住宅の場合であっても、基本構造部分について請負人は10年間の瑕疵担保責任を負わなければなりません(品確法87条)。
     10年間の瑕疵担保責任が強制されるのは、この法律が施行された平成12年4月以降に契約を締結した新築住宅です。売買契約や請負契約が平成12年3月以前である場合には、品確法は適用されないことにも注意が必要です(品確法附則1条、2条2項)。

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