法律・税務・賃貸Q&A

賃貸借契約期間中の賃借人の破産

弁護士 江口 正夫
海谷・江口法律事務所

質問

当社所有の賃貸ビルの1室をA社に賃貸したのですが、賃貸借契約期間中にA社が破産したとの通知を裁判所から受け取りました。A社との賃貸借契約はどのように処理すればよいのでしょうか。

月刊不動産2013年05月号掲載
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回答


1.賃貸人による賃貸借契約の解約可否

 賃借人が破産した場合、まず考えるべきことは賃貸借契約は継続するのか否かということです。

(1) 民法旧621 条

 平成16 年以前の旧破産法の時代には、民法旧第621条は「賃借人ガ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ賃貸借ニ期間ノ定メアルトキト雖モ賃貸人又ハ破産管財人ハ第617条ノ規定ニ依リテ解約ノ申入ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ当事者ハ相手方ニ対シ解約ニ依リテ生ジタル損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得ズ」と定められていました。

 この規定によれば、賃借人が破産した場合には、賃貸人は、賃借人が破産したこと自体を理由として賃貸借契約を解約することができるようにもみえますが、不動産の賃貸借の場合には賃借権自体の価値が高く、それが直ちに破産財団から除外されるということは不合理であることや、賃貸人としても不合理な利益を得るものである等の理由から、学説・判例のいずれもがこの規定の適用に関しては極めて制限的な態度を示してきました。現行破産法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律(平成16 年6月)により、民法旧621 条は廃止されています。

 したがって、現在では、賃借人が破産した場合であっても、賃貸人は賃借人の破産を理由としての解約申入れは認められていません。現行法のもとでは、賃借人が破産した場合の解約の可否は破産法53 条により規律されることになります。

(2) 破産法53 条による処理

 破産法53 条1項は「双務契約について破産者及びその相手方が破産手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは、破産管財人は契約の解除をし、又は破産者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができる。」と定めています。建物賃貸借契約は「双務契約」ですし、賃貸借契約期間中は、賃貸人も賃借人もそれぞれ債務の履行を完了しているわけではありませんので、破産法53 条1項の要件を充足しています。

 この場合には、同条項に従うと、賃借人の破産を理由に建物賃貸借契約を解除できる権限を有しているのは破産管財人のみということになります。したがって、賃貸借契約期間中に賃借人が破産した場合には、破産管財人により賃貸借契約が解除される場合もあれば、賃貸借契約を続行する場合もあり得ることになります。

(3) 賃貸人の対応

 賃貸人としては、破産管財人次第で賃貸借が解除されるか続行されるかが決まるとなると、早期に方針を決めてもらうことが必要です。しかし、破産管財人は破産当初は多くの業務に忙殺されている場合があり、速やかに賃貸借についての方針を決めるとは限りません。この場合、賃貸人は、極めて不安定な地位になりますので、賃貸人は、破産管財人に対し、相当の期間を定め、その期間内に契約の解除をするか否かを確答するよう催告をすることができます。これに対し、破産管財人が期間内に確答しなかったときは賃貸借契約を解除したものとみなされます(破産法53 条2項)。

2.賃料債権の回収

 賃貸人としては、破産したとはいえ、賃借人が建物を使用収益している以上、賃料を支払ってもらえるか否かが気になるところです。

 破産法は、破産手続開始決定前に生じた賃料は破産債権となり、将来の配当手続で一定割合が支払われることとしています。これに対して、破産手続開始決定後に生じた賃料は、破産管財人が賃料債務の履行を選択して賃貸借契約の継続を希望したときは、財団債権として随時賃貸人に弁済されることになります。破産管財人が解除を選択した場合は、破産法148 条1項8号により、同じく財団債権となりますので、原則として、その間の賃料は支払われることになります。

3.原状回復費用

 破産手続開始決定後に破産管財人が賃貸借契約を解除した場合には、原状回復費用は財団債権として配当手続とは別に随時支払われることになります。これに対し、破産手続開始決定時に既に賃貸借が終了していた場合は、原状回復費用は破産債権となりますので配当手続によって一定割合が支払われるのみとなります。

4.賃借人が破産した場合の対応

 上記のとおり、賃借人が破産した場合、賃貸人は適切に自己の権限を行使して、賃貸借の存続の有無、未払賃料の請求、原状回復費用の請求等を行うことが可能となります。

※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

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