税務相談
月刊不動産2013年3月号掲載
賃貸不動産の売買における固定資産税精算金の取扱いについて
情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
賃貸不動産の売買取引において収受した固定資産税精算金の取扱いについて教えてください
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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1.不動産売買と固定資産税の精算
固定資産税は、毎年1 月1 日時点で土地や建物を所有する者に対し、その所在地の市区町村が課する税金です。不動産の売買実務においては、売主は買主にも固定資産税の負担を求めることとし、その不動産の譲渡日からその年の12 月31 日までの期間に対応する固定資産税相当額(以下「固定資産税精算金」といいます。)を、譲渡対価とは別に買主から受領する慣習が定着しています。これが不動産売買における固定資産税の精算処理です。賃貸不動産の売買取引において固定資産税の精算処理をして固定資産税精算金を収受した場合における、売主と買主の税務上の取扱いについてまとめると、以下のとおりになります。
2.個人が売主または買主である場合の税務
(1)売主である個人の取扱い
①所得税(譲渡所得の金額)
固定資産税精算金は、不動産の譲渡に際して、その取引要素の一つとして決められることが一般的です。また固定資産税精算金は、譲渡時期、譲渡不動産の価値に応じて決定されることから、譲渡する不動産の譲渡対価としての性質を有しているといえます。また不動産の買主は、固定資産税精算金を税金として自治体に納めるために支払うわけではなく、その取得の日から年末までの期間、固定資産税の負担なしにその不動産を所有するために、不動産の購入対価の一部として売主に支払うものです。以上のような理由により、固定資産税精算金は、売主の譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に算入されます。
②所得税(不動産所得の金額)
売主が納付した固定資産税で、賦課期日において貸付けの用に供していた不動産に係るものは、原則、その全額を賦課決定があった日の属する年分の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入します。ただし、各納期の固定資産税を、各納期の開始日または実際の納付日の属する年分の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入することもできます。
③消費税(個人事業者の取扱い)
不動産の譲渡に伴い、固定資産税精算金を譲渡対価と別に受領している場合、その固定資産税精算金相当額は資産の譲渡等の対価の額に含まれます。
したがって、土地に係る固定資産税精算金は、土地の対価の額に含まれることから、消費税の計算上は非課税売上となります。一方、建物に係る固定資産税精算金は、建物の譲渡対価の額に含まれることから、消費税の計算上は課税売上となります。
(2)買主である個人の取扱い
①所得税(不動産所得の金額)
賃貸不動産を取得した個人が、その取得の際に売主に支払う固定資産税精算金は、前述2.(1)のとおり、その賃貸不動産の購入対価としての性質を有しているといえます。したがって、支払った固定資産税精算金は、取得した賃貸不動産の取得価額を構成することになります。固定資産税精算金を支払ったといっても、納税義務者として固定資産税そのものを納付したわけではありませんから、たとえ取得した不動産を引き続き貸付けの用に供したとしても、その固定資産税精算金を不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできません。
②消費税(個人事業者の取扱い)
不動産の取得に伴い、固定資産税精算金を譲渡対価と別に支払っている場合、土地に係る固定資産税精算金は、土地の取得対価の額に含まれることから、消費税の計算上は非課税仕入となります。一方、建物に係る固定資産税精算金は、建物の譲渡対価の額に含まれることから、消費税の計算上は課税仕入となります。
3.法人が売主または買主である場合の税務
(1)法人税の取扱い
法人が賃貸不動産の売主または買主である場合、法人税の取扱いは、個人が売主または買主である場合における所得税の取扱いと同様となります。すなわち、売主が受領した固定資産税精算金は収益金の額に算入され、買主が支払った固定資産税精算金は取得した賃貸不動産の取得価額に算入されます。
(2)消費税の取扱い
また、法人が賃貸不動産の売主または買主である場合における消費税の取扱いも、前述⒉の個人が売主または買主である場合と同様の取扱いとなります。