法律・税務・賃貸Q&A

貸家の庭を借家人が車庫に利用した場合

弁護士 江口 正夫
海谷・江口・池田法律事務所

質問

一戸建ての貸家を賃貸しています。賃借人には建物についての賃貸借契約しか締結していないのですが、先日、貸家を見回ってみると、賃借人は貸家の庭の空いている部分に簡易な組み立て式の車庫を建てて利用していることがわかりました。建物を賃貸しただけなのに、勝手にその敷地部分に簡易とはいえ車庫を建てて利用することは賃貸借契約の用法違反として賃貸借契約の解除ができるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

月刊不動産2019年10月号掲載
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回答

回答

 賃借人は、建物についての賃貸借契約しか締結しておらず、その敷地の利用に関して契約をしていない場合であっても、建物の使用のため必要な限度で敷地を通常の方法により使用することが認められています。一戸建て貸家の敷地がブロック塀や生垣で囲まれている場合、通常はその全部について建物の使用のため必要な限度で敷地を利用することができ、建物に至るまでの通路部分の通行に限らず、庭に草花を植栽したり、撤去可能な簡易な物置等を設置したりすることは認められています。しかし、敷地の通常の方法による使用の範囲を超えて使用した場合は用法違反となり、その違反行為の態様が賃貸借契約当事者間の信頼関係を破壊するに足りる場合には、賃貸人は賃貸借を解除することができます。現代においては、自家用車の使用は建物の使用に必要な範囲内の通常の使用と考えられ、敷地の一部に撤去可能な簡易な車庫を設置したことは、建物の使用に必要な範囲内の通常の使用と考えられ、用法違反を理由とする賃貸借契約の解除は認められません。

1. 借家人は建物の敷地にも使用権を有するのか

 一般に、建物の借家人は、建物を使用・収益することについての建物賃貸借契約を締結しているだけで、建物の敷地の利用については契約をしていません。このような場合に、賃貸したのは建物であって、土地についての使用・収益する権利まで与えたことはないから、土地の使用は賃貸人の別途の許可がない限り認められないと主張できるか否かが問題になります。
 確かに、借家人が賃借権の設定を受けた対象物は建物のみであって、その敷地の利用に関する契約は締結していないことがほとんどであると思われます。しかし、だからといって、賃貸したのは建物だけであるので、その敷地の利用は一切認めないと主張することが許されるわけではありません。なぜなら、借家人が建物敷地を一切利用することができなければ、借家人は建物玄関への出入りができず、建物の使用をすることができません。このことから、借家人は、契約の目的物である建物を使用するため、必要な限度でその敷地の通常の方法による使用は認められるものと解されています(東京高判昭和34年4月23日)。

2. 建物使用に必要な限度での敷地の通常の使用

 建物賃貸借契約においては、借家人が建物使用のため必要な限度での敷地の通常の使用とは、何がこれに該当するのかということが問題になります。これは、建物賃貸借契約の目的が何であるか、建物と敷地の状態がどのようなものであるのか、借家人と土地使用が賃貸人の権利を侵害するおそれがあるか否か(具体的には借家人が将来、賃借建物を賃貸人に返還する際に、土地についての原状に回復して返還することが容易か否か)等々の事情を考慮して判断される問題です。
 前述のとおり、借家人は、賃借建物に出入りするためには、少なくとも敷地端から賃借建物の出入り口までの通路部分の土地は通行できなければ建物の使用ができませんので、同通路部分の通行が「建物使用のため必要な限度での敷地の通常の使用」に該当することは明らかですが、これに限られるわけではありません。例えば賃借建物の庭の部分に観賞用の植物を植えて草花を楽しんだり、家庭菜園を作り野菜等を収穫したりすることも一般には認められていますし、建物を返還する際の撤去が容易で簡易な構築物(倉庫等)を設置することも「建物使用のため必要な限度での敷地の通常の使用」に該当すると考えられます(東京地判昭和41年1月31日)。建物の借家人がその敷地を簡易な車庫として利用することについては、車社会といわれる現代においては、建物使用に必要な範囲と考えられますし、簡易な車庫であって原状回復も容易である場合には、建物使用に必要な通常の使用と考えられると思われます。

3. 建物使用に必要な限度で通常の使用が認められる敷地の範囲

 建物使用に必要な通常の使用を上記のように考える場合には、賃借人が建物の使用のため必要な限度で使用できる敷地の範囲は、単に賃借建物の出入り口までの通路部分の土地に限られるわけではなく、一戸建て建物の敷地がブロック塀や生垣で囲まれている場合は通常はその全部と考えられます。ただし、建物の面積に比べて敷地の面積が広大である場合は、敷地のうち建物の利用のための相当な部分を区画し、その余りの土地は必要な範囲を超えるものと考えることになります。

※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

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