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買主の追完請求権

弁護士 渡辺 晋
山下・渡辺法律事務所

質問

不動産売買における物の欠陥(キズ)について、買主が追完請求をすることができるようになったと聞きました。買主の追完請求というのは、どういう意味なのでしょうか。

月刊不動産2020年05月号掲載
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回答

1. 修補、代替物の引渡しまたは不足分の引渡しを求めること

 追完請求とは、売買において、物の引渡しがなされたけれども、引き渡された物が種類、品質または数量において契約の内容に適合しない( 契約不適合である)ときに、買主が、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡しまたは不足分の引渡しを求めることです。2020年4月に施行された民法によって、追完請求が、買主の権利として定められました。

2. 民法改正によって、契約不適合責任の仕組みがつくられたこと

(1)改正前の瑕疵担保責任
 従前の民法では、まず、売買契約における物の欠陥(キズ)を「瑕疵」という言葉で表していました。そのうえで、物に瑕疵があったときには損害賠償請求が可能である、また、瑕疵のために契約の目的を達成することができないときには契約を解除することができるという瑕疵担保責任の仕組みを設け、その一方で、売買対象が不動産の場合には、買主は、欠陥の修補などを請求することができないものとされていました。たとえば、中古建物の売買で雨漏りがあった場合に買主の雨漏りの修補請求を否定したケース(東京地裁平成19年5月29日判決)があります。

(2)改正後の契約不適合責任
 これに対して、民法が改正されて2020年4月に施行されました。改正民法では、瑕疵担保責任が廃止され、「契約不適合責任」の仕組みが導入されました。契約不適合責任では、物の欠陥(キズ)につき瑕疵という言葉で表すことをやめたうえで、売買契約の買主に、①追完請求権、②代金減額請求権、③債務不履行による損害賠償請求、④債務不履行による解除権の4つの権利を認めました。

(3)追完請求権
 改正民法には、「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる」と定められています(民法562条1項本文)。この条文によって認められる買主の権利が、追完請求権です。たとえば、中古建物の売買につき、雨漏りのない建物が売買対象であった場合、買主は、雨漏りの修補を請求することができます。
 条文上、追完の方法として、修補のほか、代替物の引渡しや不足分の引渡しもできるものとされており、どの方法を選択するかを決めるのは、一次的には買主です。ただし、買主に不相当な負担を課するものでないときは、売主は、「買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる」とされています(同法562条1項ただし書き)。つまり、買主から雨漏りを理由にして、代替物(代替建物)や雨漏りのない構造物の引渡しを請求されても、修補が買主に不相当な負担を課するものでないことを理由に、修補によって対応することができるということになるわけです。

(4)契約内容の確認
 ところで、契約不適合責任は、引き渡された物が契約内容に適合していない場合の責任です。たとえば、土壌汚染についてみると、汚染がない土地として売買されていれば、土壌汚染は契約不適合ですが、汚染がある土地として売買されていれば、土壌汚染は契約不適合ではありません。また、一応は土壌汚染のない土地として売買されていても、土壌汚染の除却等は行わないという特約が定められていれば、特約は有効であって、買主は、土壌汚染の除去等を請求することはできません。契約不適合責任の存否と内容を検討するには、必ず契約内容を確認するという作業を行わなければならないということになります。

3. まとめ

 改正民法による不動産取引の実務が始まり、新たな契約書の準備や依頼者からの問合せにご苦労されているのではないかと思います。民法改正は、当初わかりやすいものにすることを目的として作業が始まりましたが、できあがった条文は、決してわかりやすいものではなく、むしろ理解が難しくなっています。適正な不動産取引を実現するために、不動産業者の皆様には、より一層民法の理解を深めていただきたいと思います。

※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

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