法律相談

月刊不動産2008年1月号掲載

行政処分の基準

弁護士 渡辺 晋(山下・渡辺法律事務所)


Q

宅建業法に基づく重要事項説明を怠った場合に、どのような行政処分を受けるのかを、知ることができるでしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1. 宅建業法違反に対する監督処分を行う場合の統一的な基準として、「宅地建物取引業者の違反行為に対する監督処分の基準」(監督処分基準)が作成され、国土交通省によって公表されています(http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/const/fudousan/index001.html)。

     監督処分基準の公表は、コンプライアンス向上の取り組みを促進し、不正行為を未然防止することを目的とするものであり、法にのっとった重要事項を説明しなかった場合にどのような処分を受けるかについては、監督処分基準により、その目安を知ることができます。

    2. さて宅建業法は、業者に対し、一定の重要事項に関して、書面を交付して取引主任者に説明させなければならない義務を課し(35条1項)、この重要事項説明義務に違反した場合には、国土交通大臣又は都道府県知事が、その業者に対し、業務の全部又は一部の停止を命ずることができることとしています(65条2項2号)。

    3. そして監督処分基準には、65条2項2号に規定する違反行為(2項2号違反行為)に対する業務停止期間の標準日数が定められています。

     監督処分基準によれば、原則的に、

    (1) ①重要事項説明の書面に必要な事項を記載せず、又は虚偽の記載をした場合、②書面は交付したものの、説明をしなかった場合、③取引主任者以外の者が、重要事項説明をした場合の3つのケース
       ---業務停止期間7日

    (2) 上記①から③までのいずれかに該当し、関係者の損害が発生した場合
       ---業務停止期間15日

    (3) 上記①から③までのいずれかに該当し、関係者の損害の程度が大であると認められる場合
       ---業務停止期間30日

     などとなっています。

    4. もっとも、①2項2号違反行為による関係者の損害が発生せず、かつ、今後発生することが見込まれない場合、②監督処分権者が2項2号違反行為の存在を覚知するまでに、又は監督処分権者の指摘に応じ、直ちに、業者が関係者の損害の補填に関する取り組みを開始した場合であって、補填の内容が合理的であり、かつ、業者の対応が誠実であると認められる場合などは、監督処分は、指示処分(65条1項)に軽減されます。

     また違反行為の軽重及び態様、違反行為後の業者の措置状況等を総合的に勘案した上で、監督処分に至らないと判断された場合には、必要な指導、助言又は勧告(71条)がなされることもあります。

    5. 業務停止処分を受けた業者は、業務停止期間中、業務停止の開始日前に締結された契約(媒介契約を除く)に基づく取引を結了する目的の範囲内の行為を除き、宅地建物取引業に関する行為はできなくなります。業務停止期間中において禁止される行為及び許容される行為を例示すると、

    ① 禁止される行為は、
     広告、電話照会に対する応対及び来客対応、モデルルームの設置・運営、媒介契約の締結・更新・業務の処理、申込証拠金の受領、契約の締結の申込みに対する承諾又は拒否の意思表示、宅地・建物の売買、交換又は賃借(自ら賃貸する場合を除く)に関する契約の締結であり、

    ② 許容される行為は、業務停止の開始日前に締結された契約(媒介契約を除く)に基づく取引を結了する目的の範囲内の行為(物件の登記、引渡し等)、宅地・建物を自ら賃貸する行為、宅地の造成工事又は建物の建築工事、物件に係る建築確認又は開発許可の申請、資金の借入れ

     となります。

    6. 指示処分、業務停止処分、免許取消処分がなされたときは、①処分日、②処分を受けた業者の商号・名称、主たる事務所の所在地、代表者の氏名、免許番号、③処分の内容、④処分の理由が、ホームページに掲載され、公表されます。

    7. 業者としては、法令に違反することがあってはならないという緊張感を維持するためにも、一度は監督処分基準に目を通しておくとよいでしょう。

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