税務相談
月刊不動産2003年4月号掲載
自宅を譲渡した場合の課税の特例について教えて下さい。
0 井出 真(井出真税理士事務所)
Q
自宅を譲渡した場合の課税の特例について教えて下さい。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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自宅及びその敷地を譲渡した場合、次式により譲渡益を計算します。
譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)=譲渡益
この式がマイナスになると譲渡損ですが、ここでは譲渡益に対する特例を説明します。
1.居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除
主たる居住用財産である土地建物等を譲渡した場合、譲渡所得金額の計算において譲渡益から3,000万円(譲渡益が3,000万円に満たないときは譲渡益の額)が控除される特例です。譲渡した居住用財産の所有期間や居住時間(住んでいた期間)の長短は、この特例の要件ではありません。ただし、3年に1度しか適用できません。(前年または前々年にこの特例や買換え特例等を受けていないことが要件となります)。居住用財産の買換え・交換の特
例(後述)とは、いずれか選択適用となります。この特例によれば、次式により長期(短期)譲渡所得金額を計算します。
総収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除(3,000万円)
2.居住用財産(所有期間10年超)の譲渡の低率課税
譲渡した年の1月1日において所有期間が10年を超える主たる居住用財産である土地建物等を譲渡した場合、3,000万円控除後の譲渡益に対する税率が低くなる特例です。つまり、この特例は、3,000万円特別控除と併用ができますが、所有期間は10年を超えていなければなりません。
一般の長期譲渡所得に対する税率は、20%・6%(所得税・住民税)ですが、この特例によれば次のようになります。a)6,000万円以下の部分
課税長期譲渡所得金額×10%=所得税
課税長期譲渡所得金額×4%=住民税b)6,000万円超の部分
課税長期譲渡所得金額×15%=所得税
課税長期譲渡所得金額×5%=住民税(計算例)
譲渡収入金額 ・・・1億円
取得費・・・・・・・概算取得費による、1億円×5%=500万円
譲渡費用・・・・・・400万円長期譲渡所得=1億円-(500万円+400万円)-3,000万円
=6,100万円
所得税=6,000万円×10%+100万円×15%=615万円
住民税=6,000万円×4%+100万円×5%=245万円3.買換え・交換の特例
買換え・交換の特例を選択すれば、次のようになります。
a)譲渡資産の価額≦買換資産の価額
譲渡がなかったものとされる。
b)譲渡資産の価額>買換資産の価額
差額部分についてのみ譲渡があったものとされる。
つまり、自宅を5,000万円で売却した場合、5,000万円以上の自宅に買い換えれば譲渡がなかったものとされ、譲渡所得税はなくなります。ただし、4,000万円の自宅に買い換えると差額の1,000万円を譲渡収入金額として長期譲渡所得が計算されます。その際の税率は26%となります。居住用財産の買換え・交換の特例には、次の2つがあります。(1)相続等により取得した居住用財産の買換え・交換の特例
★要件(すべてを満たすことが必要)
「譲渡資産の要件」①居住していた父母(祖父母)から相続(遺贈)により取得した居住用財産である。
②所有期間が10年超(譲渡した年の1月1日において)
③居住期間が30年以上
「買換資産の要件」
①譲渡した年の前年1月1日から譲渡した年の翌年12月31日までに取得する。
②譲渡した年の翌年12月31日までに居住する。
(2)特定の居住用財産の買換え・交換の特例
★要件(すべてを満たすことが必要)「譲渡資産の要件」
①所有期間が10年超(譲渡した年の1月1日において)
②居住期間が10年以上
「買換資産の要件」
①面積要件
建物・・・延べ50㎡以上280㎡以下、土地500㎡以下②経過年数要件
既存の中高層耐火共同住宅(マンション)・・・築25年以内③譲渡した年の前年1月1日から譲渡した年の翌年12月31日までに取得する。
④譲渡した年の翌年12月31日までに居住する。