賃貸管理ビジネス

月刊不動産2021年06月号掲載

管理業務を「見える化」して、オーナーにアピール

今井 基次(株式会社ideaman 代表取締役)


Q

最近、ライバルの不動産業者が管理料を値下げしました。周辺の業者も追随していて、管理受託競争が厳しくなっています。既存のオーナーからも「満室ならやることがないのだから、管理料を下げてほしい」と値下げを迫られています。やるべきことはやっていますし、しっかりそれをオーナーに伝えたいのですが、どのような方法があるのかを教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 回答

     自社で行っている業務報告を「見える化」することによって、オーナーに理解してもらいましょう。オーナーは管理会社が普段どんな仕事をしているのか、あまり知りません。日常業務をできるだけわかりやすく伝えることで、管理会社の価値を高めることができます。

  •  賃貸管理の日常業務は、細かなことの連続です。やっていることを数え上げればキリがないのですが、オーナーのためと思って必死に取り組んでいても、当のオーナーは「支払っている管理料の中でうまくやってね」くらいで、管理会社が頑張って日常業務に取り組んでいることにあまり意識が向きません。むしろ、満室であれば管理会社は特にやることもないと思い込み、「管理会社側は儲けすぎている」とすら思うオーナーもいますから、なかなか努力が報われません。儲けすぎていると思われている原因にはいくつかあります。その中でも最たるものは、管理業務の内容がオーナーにあまり知られていないこと。管理委託契約時に読み合わせをしていても、どこからどこまでが管理業務なのかを熟知しているオーナーはほぼいません。もう一つが、管理会社が行っているそれらの業務が「見える化」されていないことが挙げられます。日常的な細かな業務に対応することに精一杯で、それをアピール材料に使えている会社は非常に少ないのが現状です。それらを解決するためには、業務報告書(レポート)を通じて「見える化」する必要があります。
     賃貸管理業には、入居者募集、入居者対応、出納業務(家賃入出や各種精算)、メンテナンス、コンサルティングと、大きく5つの基幹業務があります。その5大業務の中にはそれらに付随する業務がたくさん紐づいています。例えば、入居者募集であれば、鍵の管理、物件の媒体への登録、物件の反響対応、入居審査、入居者情報の登録と管理などなど、ここでは書き切れないくらいの仕事があります。それらの5大業務の中でも、確実に「見える化」されているのは「出納業務」のみではないでしょうか。家賃送金明細などを通じて「お金」に関することは「見える化」されていますが、それ以外はほとんど「見える化」されていない会社が多いのです。
     例えば、メールや口頭で入居者の募集状況を伝えることはあっても、物件サイトへのアクセス数、反響数、内見数、空室を埋めるために行った施策などを、月次報告書として提出することはあまりありません。いつ、どんなことをして、その成果がどうなったのかということをしっかりと伝えなければ、やっていないことと同じです。
     また、入居者対応も同様です。入居者からの日常的な問い合わせやクレームについては、管理戸数に対して20%程度の頻度で発生するといわれています。つまり、管理戸数が1,000室ある場合、毎月200件ほど何かしらのアクションが入居者から起こるのです。そこにかかる管理会社のマンパワーは計り知れないものがあり、どんな事案よりも「優先案件」となるのです。しかし、夜間の水漏れも、騒音元への現地訪問も、せっかく大変な思いをしているのに報告書を作成しないことで、その重みが90%軽減されてしまうのです。確かに緊急対応をして、あと処理や連絡などをしていると報告書など作成している暇もないのは事実なのですが、それをしなければ管理会社の存在感をアピールできません。
     それから、メンテナンスに関することもあまり定形化された報告書が出されないようです。定期清掃を外注している場合などは、業者から上がってくる報告書の名前のみを管理会社に変更して提出する場合もありますが、その辺りもできていない会社が散見されます。定期巡回に関しても、オーナーよりも管理会社が現地のことを知らずに、話が噛み合わないことがありますが、これでは「何のために管理を任せているのか」と言われても仕方がありません。
     このように、せっかくやっている業務を報告書なしでそのままにしているから、管理会社の価値を高められずに「値下げ交渉」となることが度々起こってしまうのです。まずは自社でやっていることをしっかりと整理して、オーナーに報告書を通じてアピールできる体制を目指してみてはいかがでしょうか。

     

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