法律相談

月刊不動産2003年5月号掲載

第三者から土地を購入し、これを転売したところ、最近、その土地が地盤沈下してしまいました。

弁護士 草薙 一郎()


Q

第三者から土地を購入し、これを転売したところ、最近、その土地が地盤沈下してしまいました。私としては、このようなことになるとは思わなかったのですが、私にはどのような責任が生じるのでしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 【Q】
     第三者から土地を購入し、これを転売したところ、最近、その土地が地盤沈下してしまいました。私としては、このようなことになるとは思わなかったのですが、私にはどのような責任が生じるのでしょうか。

    【A】
     売買の対象物に欠陥があることを知っていたようなときには、買主に対して不法行為又は売主としての債務不履行責任を負うことになります。
     欠陥のあることを過失で知らないときも同様です。
     しかし、欠陥の存在を知らないことに過失がなかったとしても認められるのが、民法570条の瑕疵担保責任です。
     つまり、この責任は売主が無過失でも認められてしまう法定責任といえるわけです。

    【Q】
     瑕疵担保責任の内容を教えて下さい。

    【A】
     民法570条では「売買ノ目的物ニ隠レタル瑕疵」あるときに売主は責任を負うと規定されています。したがって、買主が瑕疵を知っているときは責任が生じません。
     ところで、その責任ですが、買主により売買契約をした目的が達せられないときは解除を、その他のときは損害賠償請求が可能で、これは瑕疵の事実を知ってから1年以内に行使する必要があります。

    【Q】
     損害賠償の請求というと具体的にはどのような内容になるのでしょうか。

    【A】
     損害賠償の内容については、学説その他でいろいろな主張がありますが、今の学説あるいは判例は信頼利益をもって損害賠償の範囲としているようです。
     例えば売却した土地が地盤沈下したようなケースでは、その土地の地盤の補修やその土地上の建物の修理という問題のほかに、その土地の評価額の下落という問題が生じてきます。
     土地を購入された方としては、将来、その土地を転売するときに土地の評価が下落してしまう点をどうするのかを考えることは当然です。
     しかし、判例は以下のように考えています。
     「民法570条による売主の瑕疵担保責任は、売買の目的物に一部原始的不能と評価される劣性部分がある場合に、契約の有償性に鑑みて公平ないし買主保護のために売主の過失の有無を問わずに認められた一種の無過失責任であるから、損害の範囲は、買主が目的物の瑕疵を知っていたなら被らなかったであろう損害、すなわち信頼利益に限ると解すべきであり、そうすると、控訴人らが主張する本件各宅地の価格減少分は、本来、買主が瑕疵のない宅地の給付を受けたことを前提にしてこれを他に転売した場合を想定して、瑕疵ある宅地の転売価格との差額を損害として評価することに帰着し、すなわち、履行利益に相当する分であり、信頼利益ではないから、瑕疵担保責任による損害賠償の範囲には入らないと解すべきである」として、土地の下落分は損害ではなく、宅地の補修相当分を損害として認定しています(仙台高裁平成12年10月25日判決)。
     その他にも、道路位置指定が受けられないため建築確認を受ける見込みのない土地の売買のケースでも、建物建築費は損害として認めたものの、土地の価格の差額分については、履行利益に該当するものとして損害とは認定しませんでした(東京高裁昭和62年6月30日判決)。
     以上のように、売買の瑕疵担保責任という言葉は知っていても、その責任の範囲の認定には難しい問題がありますので注意して下さい。
     なお、前述のように瑕疵の存在について売主側に過失があるときは、不法行為等の責任が生じ、ケースによっては履行利益の責任も生じますので、誤解しないようにして下さい。

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