税務相談

月刊不動産2006年11月号掲載

相続・贈与時の借地権等の評価(4)

代表社員 税理士 玉越 賢治(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている場合の借地権及び貸宅地の相続・贈与時の評価、相当の地代を支払っている場合における特殊なケースの評価について教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1.土地の無償返還届出書が提出されている場合の借地権の評価

     権利金を収受した場合又は特別の経済的利益を受けた場合を除き、法人が借地権の設定等により他人に土地を使用させた場合において、収受する地代の額が相当の地代の額に満たないときであっても、次の要件に該当する場合には、権利金の認定課税はないものとして取り扱われます。

    (1) 借地権の設定等に関する契約書(土地賃貸借契約書)において、将来借地人がその土地を無償で返還することが記載されていること

    (2) 土地の賃貸人と賃借人とが連名の書面(土地の無償返還に関する届出書)により遅滞なく所轄税務署長に届け出ること

     土地の無償返還届出書は、土地所有者と借地人とが将来借地権を無償で返還することを約束した契約であり、借地人に相続・贈与が発生した場合、その借地権価額はゼロとして扱うことになります。

    なお、個人間においては使用貸借制度があるため、この土地の無償返還届出書の取扱いはありません。

    2.土地の無償返還届出書が提出されている場合の貸宅地の評価

     借地権の設定されている土地について、土地所有者に相続・贈与が発生した場合において、その土地に関して土地の無償返還届出書が提出されているときは、その貸宅地の価額は、自用地価額の80%相当額で評価します。

     貸宅地の評価は、原則として自用地価額から借地権価額を控除して評価します。したがって、土地の無償返還届出書が提出されている場合の借地権価額はゼロなので、このような貸宅地の相続・贈与時の評価は自用地評価額であるべきです。

     しかし、その土地に実際建物が建っており借地借家法の適用を受けていること、相続・贈与時にその借地権が返還されているわけではなく、借地権の取引慣行のない地域における貸宅地の評価を自用地価額の80%相当額としていることとのバランス上、土地の無償返還届出書の提出されている貸宅地についても自用地価額の80%相当額で評価することとしたのです。

     この場合において、被相続人又は贈与者が同族会社にその土地を貸し付けているときは、その同族会社の株式等を純資産価額で評価する上で、貸宅地の評価上控除した20%相当額を純資産価額に加算して計算することにしています。

     なお、土地の無償返還届出書が提出されている場合であっても、その貸借が使用貸借である場合には、その貸宅地の相続・贈与時の評価額は自用地価額として評価することになります。

    3.相当の地代を引き下げた場合

     借地権の取引慣行のある地域で相当の地代を支払っている場合において、その地代を引き下げたときは、原則として、地代引下げ時に土地所有者から借地人に贈与があったものとされます。

     ただし、地代引下げが、地代を引き下げる代わりに借地権利金を授受することにした、借地権設定当時に比べて土地の価額が下落したというような相当の理由がある場合には、このような認定贈与課税は行われません。

    4.相当の地代を支払っている場合の貸家建付借地権等の評価

     次の(1)から(3)に掲げる借地権が設定されている土地が貸家の用に供された場合、又は(4)から(6)までの場合の貸家建付借地権、転貸借地権、転借権の価額は、相当の地代を支払っている場合の借地権等の価額を基として上記までの定めにより評価します。

    (1) 相当の地代を支払っている場合の借地権

    (2) 相当の地代に満たない地代を支払っている場合の借地権

    (3) 土地の無償返還届出書が提出されている場合の借地権

    (4) 相当の地代を支払って借地権の転貸があった場合

    (5) 相当の地代に満たない地代を支払って借地権の転貸があった場合

    (6) 土地の無償返還届出書が提出されて借地権の転貸があった場合

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