税務相談

月刊不動産2006年9月号掲載

相続・贈与時の借地権等の評価(2)

代表社員 税理士 玉越 賢治(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

前回は、借地権等が設定されている場合におけるその借地権等の評価について説明を受けましたが、借地権等が設定されている宅地(貸宅地)等の評価について教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  •  借地権等が設定されている土地については、財産評価基本通達に、その評価方法が定められています。

    1.貸宅地の評価
     貸宅地とは、土地所有者が宅地を借地権者等に賃貸して宅地を直接使用収益させている場合の宅地のことをいい、正確には「宅地の上に存する権利の目的となっている宅地」といいます。
     貸宅地は、路線価方式又は倍率方式で計算した宅地の自用地価額(更地価額)から、借地権等の価額を控除して評価します。
     ただし、借地権の取引慣行がない地域(したがって、その地域の借地権価額はゼロ評価)であっても、土地所有者からみれば他人所有の家屋が存することに伴い自由に使用収益することができないという利用上の制約を考慮して、借地権割合を20/100として計算した価額を控除して評価額とします。
     なお、倍率地域にある宅地の固定資産税評価額が、地下鉄のずい道設置のために区分地上権の設定又は特別高圧架空電線架設のために区分地上権に準ずる地役権の設定に伴う利用価値の低下を織り込んで評定されている場合には、その利用価値の低下がないものとした場合の固定資産税評価額に倍率を乗じて自用地価額を算出します。
     定期借地権等の目的となっている宅地は、原則として、その宅地の自用地価額から定期借地権等の価額を控除して評価しますが、簡便法として、定期借地権等の残存期間に応じて5/100~20/100の割合を乗じて計算した金額を控除して評価額とすることができます。

    2.貸家建付地の評価
     貸家建付地とは、土地所有者が建物を建築して賃貸し、その建物の敷地となっている宅地を借家人に間接的に使用収益させている場合の宅地のことをいいます。
     貸家建付地は、次の算式で計算して評価します。

     自用地価額-自用地価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合

    3.貸家建付借地権等の評価
     貸家建付借地権とは、土地所有者から宅地を借り受けて家屋を建築し、この家屋を賃貸している場合の借地権のことをいいます。土地所有者にとってみれば、貸宅地です。
     貸家建付借地権等は、宅地の使用収益権の一部を借家人が借家とともに利用していることから、それだけ借地権等の価値が減少していると考えられることから、次の算式で計算して評価します。

     借地権等の価額-借地権等の価額×借家権割合×賃貸割合

    4.転貸借地権の評価
     転貸借地権とは、土地所有者から宅地を借り受け、それを自己の用に供することなく、他人に転貸している場合の借地権のことをいいます。
     このような借地権は、借地権の上に更に借地権が設定されたことにより、借地権の一部が転借人に移転し、その第一次借地権が減価したものとみて、次の算式で計算して評価します。

     借地権価額-転借権の価額(=借地権価額×借地権割合)

    5.転借権の評価
     転借権とは、他の借地権者から宅地を又借りしている場合の借地権のことをいい、本来の借地権の上に設定された第二次借地権というべきもので、次の算式で計算して評価します。

     借地権価額×借地権割合

     なお、貸家の敷地の用に供されている転借権(貸家建付転借権)は、次の算式で計算して評価します。

     転借権価額-転借権価額×借家権割合×賃貸割合

    6.借家人の有する宅地等に対する権利の評価
     借家人がその借家の敷地である宅地等に対して有する権利の価額は、原則として、次の算式で計算して評価しますが、その借家権が権利金等の名称をもって取引される慣行のない地域にある場合は評価しません(ゼロ評価とする)。

     借地権価額又は転借権価額×借家権割合×賃借割合

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