税務相談
月刊不動産2002年10月号掲載
特定事業用資産の買換え特例について教えて下さい。
0 井出 真(井出真税理士事務所)
Q
特定事業用資産の買換え特例について教えて下さい。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
-
特定の事業用資産の買換えの特例の態様は、20種類以上あり、課税の繰延べ割合は、原則として80%とされています。そのうち、多く使われているのは、次の2つです。
(1)既成市街地等の内から外への買換え
ここでの既成市街地等とは、①首都圏の既成市街地②近畿圏の既成都市区域③名古屋市(周辺部を除く)をいいます。ただし、平成5年1月1日以降にしゅん功認可のあった埋立地は除かれます(平成14年中に譲渡した場合)。この特例は、上記の三大都市圏内にある事業用の建物及びその敷地としての土地等(所有期間は、譲渡した年の1月1日において10年超)を譲渡して、それ以外の地域内にある土地等、建物、構築物、機械装置に買換える場合に受けることができます。
(2)長期保有事業用資産の買換え
この特例は、事業用の土地等、建物、構築物(所有期間は、譲渡した年の1月1日において10年超)を譲渡して、土地等、建物、構築物、機械装置に買換える場合に受けることができます。
〔80%課税繰延べ〕
事業用資産の買換え特例においては、譲渡益のうち80%(90%の場合もある)部分の課税を、将来へ繰り延べることができます。100%課税が繰り延べられる特例(居住用財産の買換え特例、固定資産の交換の特例等)とは、譲渡所得の金額が異なってきます。(図)
同額での買換えの場合、100%課税繰延べでは、課税対象となる譲渡所得はありません。しかし、80%課税繰延べでは譲渡益のうち20%相当額は課税対象になります。
(課税譲渡所得)1億円×20%-3,000万円×20%=1,400万円
また、取得した事業用資産の取得費は、1億円ではなく、譲渡前の事業用資産の取得費を引き継ぎます。また、上記の計算で、課税対象部分も取得費になります。
(買換えた事業用資産の取得費)3,000万円+1,400万円=4,400万円
例えば、買換えた事業用資産が、建物や構築物、機械装置のときは、取得費が低い分毎年の減価償却費も低くなります。また、土地等でも取得費が低いと将来譲渡する際に譲渡益が多くなります。この様に、譲渡した資産の取得費を引き継がせることにより、将来の所得が多く計算されます。これを課税の繰延べといいます。