労務相談

月刊不動産2024年2月号掲載

派遣労働者の受入れ期間の制限〈後編〉

野田 好伸(特定社会保険労務士)(社会保険労務士法人 大野事務所代表社員)


Q

 2年前より経理担当として派遣労働者を受け入れていますが、受け入れ期間に3年の制限があると聞きました。業務内容を変更すれば、引き続き3年を超えて当該派遣労働者を受け入れることが可能とのことですが、現在行っていない別の経理業務に変更すれば継続することが可能でしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 回答

     同一の派遣労働者を同一の組織単位で受け入れられる期間の上限は3年となっているため、当該派遣労働者に対しては、①3年の制限期間にて受け入れを止める、②直接雇用に切り替える、③業務内容を変更のうえ引き続き派遣労働者として受け入れる、のいずれかの措置を講じる必要があります。なお、業務内容を変更する場合には、いわゆる課やグループを変更するなどして、経理以外の業務に変更する必要があります。

  • はじめに

     労働者派遣法(以下、派遣法)では、派遣の受入れ期間の制限ルールが設けられており、すべての業務において、事業所単位と個人単位の2つの期間制限が適用されます。
     前編では、この2つのルール「派遣先事業所単位の期間制限」と「派遣労働者個人単位の期間制限」について説明しました。後編では、まず、その両方に設けられた、いわゆる「クーリング期間」の考え方について解説します。

  • クーリング期間

     派遣終了後に再び派遣を受け入れる場合のクーリング期間(派遣を受け入れていない期間)は、派遣先事業所単位と派遣労働者個人単位の両方に設けられており、いずれも「3カ月」となります。

    ①事業所単位の期間制限
     事業所ごとの業務について、労働者派遣の終了後に再び派遣する場合、派遣終了と次の派遣開始の間の期間が3カ月を超えないときは、労働者派遣は継続しているものとみなされます。

    ②個人単位の期間制限
     同一の組織単位における業務について、派遣終了後に同一の派遣労働者を再び派遣する場合、派遣終了と次の派遣開始の間の期間が3カ月を超えないときは、労働者派遣は継続しているものとみなされます。この場合、同一の派遣労働者について、派遣元(派遣会社)が異なる場合も同様です。派遣先は、個人単位の期間制限に違反することを理由に、派遣元(派遣会社)に対し、派遣労働者の交代を要求することができます。

  • 労働契約申込みみなし制度

     派遣先が事業所単位および個人単位の期間制限に違反して労働者派遣を受け入れた場合、その時点で、派遣先が派遣労働者に対して、当該派遣労働者の派遣元における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなされます。なお、以下の違法派遣に該当する場合も同様に労働契約の申込みをしたものとみなされます(派遣先が違法派遣に該当することを知らず、かつ、知らなかったことに過失がなかったときを除きます)(図表1)。

    【違法派遣の例】
    ・労働者派遣の禁止業務に従事させた場合
    ・無許可の事業主から労働者派遣を受け入れた場合
    ・期間制限に違反して労働者派遣を受け入れた場合
    ・偽装請負の場合

  • 離職した労働者の派遣受け入れの禁止

     派遣先は、労働者派遣を受けようとする場合において、派遣労働者が自社の退職者であるときは、退職日から起算して1年を経過する日までの間は、当該派遣労働者( 60歳以上の定年退職者を除く)に係る労働者派遣を受け入れてはなりません(図表2)。

  • おわりに

     期間制限を回避する(クーリング期間を成立させる)目的で、派遣期間の受け入れ後に業務委託契約(個人事業主)に変更する企業もあるようですが、契約形態を変更したとしても指揮命令・労務提供関係などの派遣実態がある場合には法違反との判断になります。
     また、派遣労働者を受け入れる場合、派遣先においても、派遣会社へ情報提供したり、過半数労働組合等の意見聴取手続きを行ったり、派遣会社へ抵触日(期間制限違反となる最初の日)を通知したり、派遣先管理台帳を整備したりするなど、派遣法に定められたさまざまな措置を講じる必要があります。これらの措置を講じていない場合、法違反として行政指導に留まらず、「厚生労働大臣による勧告」や「事業主名等の公表」となる可能性がありますので、ご留意ください。

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