税務相談
月刊不動産2003年3月号掲載
新設される相続時精算課税制度について教えて下さい。
0 井出 真(井出真税理士事務所)
Q
新設される相続時精算課税制度について教えて下さい。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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贈与時に2,500万円の特別控除を設け、その金額を上回る部分については贈与税を支払い、その後の相続時にその贈与財産と相続財産とを合計した価額を基に計算した相続税額から、すでに支払った贈与税を控除する制度です。なお、特別控除(2,500万円)を上回る部分に対する税率は、20%(一律)です。
【Q1】
Aさんは、この制度により、父より評価額3,000万円のマンションの贈与を受けました。Aさんの贈与税額はいくらになりますか。また、将来の相続発生時にAさんが取得した相続財産に加算される贈与財産の価額はいくらですか。【A1】
(3,000万円-2,500万円)×20%=100万円、贈与税額は100万円。加算される贈与財産の評価額は3,000万円、贈与時の評価額です。ただし、次の要件があります。
①贈与者は65才以上の親、受贈者は20才以上の子である推定相続人(代襲相続人を含む)であること。
②この制度を選択する受贈者は、最初の贈与を受けた年の翌年(2月1日から3月15日まで)において、その旨の届出を添付した贈与税の確定申告を行うこと。
この特例は、受贈者である各兄弟姉妹が、贈与者である父、母ごとに選択できます。
【Q2】
C、Dさんは、父からそれぞれ3,000万円の贈与を受け、相続時精算課税制度を選択しました。将来、父が亡くなり相続財産が5,000万円であったとき、C、Dさんが支払うべき相続税額はいくらですか。なお、他に相続人はなく、2分の1ずつ相続するものとします。【A2】
(贈与時)贈与税額はそれぞれ100万円(Q1参照)。(相続時)
①課税価格の合計額:1億1,000万円
3,000万円+3,000万円+5,000万円=1億1,000万円
②基礎控除:7,000万円
5,000万円+1,000万円×2人=7,000万円
③課税遺産総額:4,000万円(①-②)
④相続税の総額
4,000万円×1/2=2,000万円:法定相続分相当額
2,000万円×15%-50万円=250万円:法定相続分に応じた相続税額
250万円×2人=500万円:相続税の総額
500万円×1/2-100万円=150万円:C、Dさんが支払うべき相続税額
(相続税の速算表)
相続時精算課税制度で、自己居住用家屋の取得資金や増改築資金の贈与を受けた場合で、一定の要件を満たすときは、特別控除が1,000万円上乗せされ3,500万円となります。また、住宅取得資金等の贈与に限り、親の年齢制限はありません。つまり65才未満の親からの贈与についても適用できます。
ただし、次の要件があります。
①取得する住宅の要件
ア)取得する家屋の床面積は、50㎡以上であること。
※床面積は、登記簿上表示される面積をいいます。イ)中古住宅を取得する場合、築後経過年数が取得の日前20年(耐火建築物は25年)以内であること。
②増改築の要件
受贈者が所有する家屋について行う増築、改築、大規模の修繕、大規模の模様替えその他の工事で次の要件を満たすものをいいます。
ア)増改築の工事費用が100万円以上であること。
イ)増改築後の家屋の床面積は、50㎡以上であること。