法律相談

月刊不動産2009年12月号掲載

新築住宅の意味

弁護士 渡辺 晋(山下・渡辺法律事務所)


Q

住宅瑕疵担保履行法において、新築住宅とはどのような意味なのでしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1.住宅瑕疵担保履行法における新築住宅は、新たに建設された住宅であって、建設工事の完了から1年以内で、かつ、人が住んだことのないものを意味します。

    2.平成21年10月1日から、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)が施行されています。宅建業者は、同日以降に引き渡す新築住宅について、資力確保措置(保険への加入又は保証金の供託)が必要となっています。

    3.ところで、国土交通省が行った平成21年8月のアンケートでは、住宅事業者の98.4%が、法律により、新築住宅を引き渡すには保証金の供託又は保険への加入が義務付けられることを知っていると答えており、住宅瑕疵担保履行法に基づく資力確保措置については、おおよその事業者に周知が図られたといってもよさそうです。

     もっとも、制度の詳細については、まだ必ずしも徹底されているとはいえません。例えば、資力確保措置を必要とする住宅には、賃貸住宅も含まれるのですが、このアンケートでは、賃貸マンションや賃貸アパートも対象に含まれることを知っていると答えた住宅事業者は67.8%にとどまっています。

    4.以下、ここで改めて、新築住宅の意味等を確認、整理することとします。

    (1) まず、「住宅」とは、人の居住の用に供する家屋又は家屋の部分を指し示します。ここで住宅とは、賃貸住宅も含む概念であり、民間賃貸住宅のみならず公営住宅や公務員宿舎なども含まれます。

     買主自身は居住しない、いわゆる投資用マンションも住宅に入ります。

     ホテル、旅館については、人を宿泊させる営業のための施設であって、基本的に住宅には該当しません。ただし、住宅として分譲した部屋を空いている時にホテルとして利用している場合には、住宅に該当します。社会福祉の関連施設で、住宅に該当するものとしては、介護保険法に基づく認知症対応型共同生活介護や介護予防認知症対応型共同生活介護を行う住居(グループホーム)、障害者自立支援法に基づく共同生活介護を行う住居(ケアホーム)、共同生活援助を行う住居(グループホーム)があります。老人福祉関連施設のうち、老人福祉法に基づき設置される特別養護老人ホーム、有料老人ホーム等といった事業を行うための施設は、住宅ではありません。他方で、グループホームや高齢者向け賃貸住宅などは住宅です。

     住居とオフィスなどが混在した併用住宅の共用部分については、住居部分の共用部分だけではなく、併用住宅全体の共用部分も、住宅となります。

    (2) 次に「新築」とは、建設工事完了から1年以内で、かつ、人が住んだことのないことをいいます。

     契約時点で新築住宅であれば、引渡し時点が工事完了日から1年を超えていても、住宅瑕疵担保履行法の対象とされます。モデルルームが工事完了後1年以内に販売された場合や、体験型の宿泊をさせた場合であっても、新築であることに変わりはありません。

    (3) 供託すべき保証金又は保険料は、住宅の戸数が基礎となります。独身寮やグループホームなどの個々のユニットについては、独立した住居として利用可能な場合(利用上の独立性がある場合)には1戸と算定します。利用上の独立性は、i 外部との独立の出入口の存在、ii 水道等の設備の存在、iii 他の住戸との共用設備の不存在などを総合的に考慮して、その有無が決定されます。

     母屋とは別に別棟を建てる場合でも、別棟が利用上の独立性を有し、人の居住の用に供する家屋であれば、住宅に該当し、1戸と数えられます。

     建築確認には増築であっても、従来からの家屋から独立した住戸として建てられた住宅については、新築住宅に該当する場合があります。

    5.資力確保措置については、毎年3月31日と9月30日が基準日です。住宅瑕疵担保履行法の施行後、最初の基準日は平成22年3月31日です。事業者が供託によって資力確保措置の義務を果たす場合には、この日までに、基準額以上の保証金を供託所に供託しておかなければなりません。

     耐震強度偽装事件によって見直された法制度のなかで、締めくくりに位置づけられているのが、住宅瑕疵担保履行法です。宅建業者は、安全な住宅を供給するために、確実に、法に基づく業務を履践しなければなりません。

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