法律・税務・賃貸Q&A

投資用マンションにおける窓先空地の説明

弁護士 渡辺 晋
山下・渡辺法律事務所

質問

投資用マンションを購入しました。広告では、空き地があるから駐車場収入を得られると表示されていましたが、購入後、条例によって空き地を駐車場として貸すことはできないことが判明しました。売主と仲介業者に損害賠償を請求することができるでしょうか。

月刊不動産2019年11月号掲載
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回答

1. 損害賠償請求できる

 売主と仲介業者のいずれに対しても、損害賠償請求をすることができます。

2. 説明義務

 宅建業者は、不動産取引に関して知識を有する専門家です。消費者が購入しようとする物件に関して、正確な情報を提供しなければならない立場にあり、不正確な情報を提供して購入・不購入の判断を誤らせないようにする信義則上の義務があります(東京高判平成1 1 . 9 . 8。判時1710号110頁)。不正確な情報提供によって一般消費者に損害を被らせた場合には、損害賠償責任を負います。
 東京地判平成3 0 . 7 . 1 1( 2 0 1 8WLJPCA07116005)では、投資用マンションについて、空き地を利用して駐車場収入を得られると広告表示をしていたにもかかわらず、実際には条例によって空き地を駐車場として貸すことができなかった事例において、買主から売主と仲介業者への損害賠償請求が認められています。

3. 東京地判平成30.7.11

(1)事案の概要
 ①Xは、平成27年12月28日、Zの媒介により、Yとの間で土地建物を代金5,680万円で購入した(本件売買)。売買対象の土地建物は、4室のアパートとその前面の駐車場であり(Yがアパートを設計・建築している)、本件売買は、賃料収入を得ることを目的とするものであった。
 Zは、Yから得た情報をもとにして、「希少駐車場2台分付」と記載した販売広告を作成し、これをXにメールで送信していた。販売広告には、想定賃料についてワンルーム4室が2 5 万円(6万円が2室、6万5 , 0 0 0 円が2室)、駐車場が4万3,200円(2万1,600円が2台)と記載されている。

 ②本件売買の後、Xから駐車場部分を賃借した賃借人が自動車の保管場所標章(車庫証明)を取得しようとしたところ、この駐車場部分は窓先空地※であって、東京都建築安全条例19条によって物を置くことができない場所であったために、車庫証明の交付を受けることができなかった。
※災害時の安全な避難と良質な住環境の確保のために共同住宅等の居室の窓の前面に設けられた通路や空地のことで、1階住戸の窓に面する敷地部分に設けられた空地の幅員等は、建物の規模に応じて定められている。東京都や横浜市など一部の自治体でのみ実施されている。

 ③実際には2台分の駐車場収入を得ることができない物件であったのに、販売広告には2台分の駐車場収入を得る可能性がある物件であると記載されており、正確な情報が提供されなかったとして、Xは、YとZに対して損害賠償を求め、訴えを提起した。判決では、不正確な情報を記載した販売広告を作成してXに提供したことについて不法行為が成立するとして、Xの請求が肯定された。

(2) 裁判所の判断
 「本件売買契約時、駐車場部分は窓先空地又は避難経路として駐車場として賃貸することができなかったのであるから、これを駐車場と表現することは、収益物件としての売買目的物である本件土地建物の販売広告としては不正確な情報を記載したものであり、誤認を生じさせるものであったといわざるを得ない。
 Yは、建物を設計・建築し、駐車場部分が窓先空地又は避難経路であると認識していた又は認識し得たにもかかわらず、不正確な販売広告を作成してZに提供し、Zが平面図を転載して販売広告を作成して、Xに土地建物の購入を勧誘していることからすると、Yが不正確な情報を記載した販売広告を作成してZに提供したことは、買主であるXとの間で不法行為が成立するというべきである。
 また、本件建物が4室のアパートであること、販売広告の記載内容からすると、Zにおいても土地建物は収益物件として売買を媒介する物件であることを認識していたと認められる。そして、Zが宅地建物取引業者であることに照らすと、土地建物を収益物件として売買するに際して、土地建物にかかる法令上の制限について、誤解を生じさせる記載がある広告を使用しないようにする注意義務があると解するべきであり、収益物件として駐車場付きの物件である旨の記載のある販売広告を使用する前提として、駐車場部分を賃貸用の駐車場として使用できるか否かについて調査する義務があったというべきである。そして、Zは同調査をすることなく、漫然とYから提供された平面図を使用して広告を作成し、さらに、駐車場2台分付きの記載を強調しており、上記義務違反として不法行為の成立を免れないというべきである」。

4. まとめ

 宅建業者は不動産取引の専門家ですが、建築関連法規は膨大な数があり、そのすべてのチェックが求められているわけではありません。しかし、不動産の購入者において、購入動機に直接に影響するものについては、確実にこれを調査し、その結果を購入者に説明する必要があります。条例が投資目的の不動産購入者の収入に直接に影響するような場合には、条例についても調査し、説明することは、宅建業者の義務ということになります。

※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

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