税務相談
月刊不動産2010年6月号掲載
所得税の不動産所得の計算方法について
情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
所得税の不動産所得の計算方法について教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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1.不動産賃貸収入と所得税
(1)相続時精算課税とは
個人が所有する賃貸不動産の家賃や地代に係る所得は不動産所得とされ、所得税の課税対象となります。不動産所得の金額は、不動産賃貸に係る総収入金額からその収入を得るために必要とした経費の額を差し引いて計算します。(1)総収入金額の範囲
不動産所得の総収入金額には、次のものも含みます。
①名義書換料、承諾料、頭金などの名目で受領するもの
②敷金や保証金等のうち、返還を要しないもの
③共益費等の名目で受け取る電気代、水道代や掃除代等
(2)家賃等の収入計上時期
①契約や慣習などにより支払日が定められている場合は、その定められた支払日が収入計上時期となります。
②支払日が定められていない場合は、実際に支払を受けた日が収入計上時期となります。請求があった時に支払うべきと定められているものは、請求日となります。
③家屋又は土地を賃貸することにより受け取る権利金や礼金は、貸し付ける資産の引渡しを必要とするものは引渡しのあった日、引渡しを必要としないものについては、契約の効力発生日において収入に計上します。また、名義書換料、承諾料、頭金等の名目で受け取るものについても同様に取り扱います。
④敷金や保証金のうち返還を要しないものは、返還を要しないことが確定した都度、収入に計上します。
(3)必要経費
必要経費とは不動産収入を得るために必要な費用をいいます。具体的には、賃貸アパートの固定資産税、損害保険料、減価償却費や修繕費等が該当します。
2.損益通算
(1)損益通算とは
損益通算とは、2種類以上の所得があり1つの所得が黒字、他の所得が赤字といった場合において、その各所得の黒字と他の所得の赤字とを、一定の順序に従って差引計算するというものです。
所得が赤字の場合に損益通算の対象となる所得は、不動産所得のほか、事業所得、譲渡所得と山林所得です。
(2)損益通算の対象とならない不動産所得の赤字
不動産所得の金額の赤字のうち、次に揚げる損失の金額は、その損失が生じなかったものとみなされ、損益通算することができません。
①別荘等、生活に通常必要でない資産の貸付けに係るもの
②土地等を取得するために要した借入金の利子に相当する部分の金額で一定のもの
③一定の組合契約に基づいて営まれる事業から生じたもので、その組合の特定組合員に係るもの
3.不動産所得の赤字と土地取得に係る借入金利子の関係
不動産所得の赤字のうち、土地を取得するための借入金の支払利子部分は、損益通算ができません。具体的には、次のような取扱いになります。
(1)不動産所得の赤字が土地等を取得するための借入金利子よりも多い場合
①不動産所得の赤字のうち、土地取得に係る借入金利子に相当する金額は損益通算ができません。
②土地の借入金利子以外の赤字は、損益通算ができます。
(2)不動産所得の赤字が土地等を取得するための借入金利子よりも少ない場合
不動産所得の赤字はすべて切り捨てられ、損益通算ができません。この場合において建物の取得に係る借入金利子は、損益通算ができます。また土地と建物を一部自己資金、残りを借入金により取得した場合は、この借入金で得た資金は、まず建物の取得に充てたと考えて計算します。
4.譲渡所得の金額と不動産所得の金額の損益通算
(1)株式等に係る譲渡所得等の金額との損益通算
不動産所得の赤字は、株式等の譲渡による所得の黒字と損益通算できません。同様に、申告分離課税の株式等の譲渡による譲渡所得等の金額に赤字がある場合は、不動産所得の黒字とは損益通算できません。
(2)土地建物等に係る譲渡所得等の金額との損益通算
不動産所得の赤字は、土地建物等の譲渡所得の黒字や申告分離課税の株式等の譲渡による譲渡所得等の黒字と損益通算できません。同様に株式等の譲渡による譲渡所得等の赤字と、不動産所得の黒字とは損益通算できません。