税務相談
月刊不動産2013年6月号掲載
建て替え中の住宅の敷地にかかる固定資産税の住宅用地特例
情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
建て替えにより1月1日時点で住宅が存在しない場合における固定資産税の住宅用地の課税標準特例の取扱いについて教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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1.住宅用地の課税標準の特例
土地と家屋の固定資産税の課税標準は、固定資産税評価額を基に計算します。ただし、賦課期日(1月1日)において住宅の敷地になっている土地は住宅用地については、次のような課税標準の特例が設けられています。
(1)住宅用地のうち200㎡以下の部分は、固定資産税評価額の6分の1相当額を課税標準とします。
(2)住宅用地のうち(1)の面積を超える部分(家屋の床面積の10 倍を限度)については、固定資産税評価額の3分の1相当額を課税標準とします。
2.住宅建て替え時の住宅用地の特例
住宅を建て替え工事中により、賦課期日現在において住宅が存在しない場合、住宅の敷地となる予定の土地については、一定要件を満たす場合、住宅用地と認められ、前述1.の課税標準の特例の適用が受けられます。
地方税の取扱いを定めた総務大臣通知(平成22年4月1日、市町村税関係)においては、「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例における『敷地の用に供されている土地』とは、特例対象となる家屋を維持し又はその効用を果たすために使用されている1画地の土地で、賦課期日現在において当該家屋の存するもの又はその上に既存の当該家屋に代えてこれらの家屋が建設中であるものをいうものであること。」と定義されています(第3 章第2 節第1、20(1))
建て替え工事中の住宅の敷地である土地の具体的な取扱いは、旧自治省固定資産税課長通達(平成6年2月22日付自治固第17 号)において、次の要件をすべて満たす土地は住宅用地として取り扱ってよいとされています。
(1)当該土地が、当該年度の前年度に係る賦課期日において住宅用地であったこと。
(2)当該土地において、住宅の建設が当該年度に係る賦課期日において着手されており、当該住宅が当該年度の翌年度に係る賦課期日までに完成するものであること。
(3)住宅の建て替えが、建て替え前の敷地と同一の敷地において行われるものであること。
(4)当該年度の前年度に係る賦課期日における当該土地の所有者と、当該年度に係る賦課期日における当該土地の所有者が、原則として同一であること。
(5)当該年度の前年度に係る賦課期日における当該住宅の所有者と、当該年度に係る賦課期日における当該住宅の所有者が、原則として同一であること。
3.住宅用地の認定を受けられないケース
(1)1月1日前に住宅を取り壊したが、1月1日までに建築確認申請がされていないケース
住宅の建て替えにより、前記2.の住宅用地の要件を満たせず、固定資産税の課税標準の特例の適用を受けられないケースが後を絶ちません。平成24年7月1日から12月31 日までの下半期に、東京都が納税者の不服申立てを棄却した固定資産税の賦課決定をめぐる裁決事例でも、10件の事例が建て替えをめぐるケースです。裁決事例において目立つのは、「賦課期日である1月1日前に旧家屋の取壊しをしたものの、1月1日までに建築確認申請がされていない」という、前述の固定資産税課長通達の(2)を満たさないケースです。
なお、東京都の取扱いでは、前述の固定資産税課長通達の(2)の趣旨を押し広げ、「賦課期日において住宅の新築について建築主事又は指定確認検査機関に確認申請書を提出しており、かつ、当該年度に係る賦課期日後の3月末日までに住宅の新築工事に着手している場合」は、住宅用地として認めるとしています。
(2)前年度の賦課期日における住宅の所有者と当該年度の賦課期日における住宅の所有者が別であるケース
年の途中で中古住宅を買ってから建て替えにかかり、賦課期日である1月1日をまたいでしまったというケースで課税標準の特例が受けられなくなるケースもあります。これは前述の固定資産税課長通達の(5)を満たさないケースです。
また、耐震性を向上させるため個人名義のアパートの建て替えをし、資金を金融機関から借り入れる必要があったためアパートオーナーが経営する会社が施主となって工事を行ったが、1月1日をまたいでしまったというケースもあります。これも前述の固定資産税課長通達の(5)を満たさないので、住宅用地の特例の適用は受けられません。