税務相談
月刊不動産2011年2月号掲載
広大地の相続税評価
情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
相続税における広大地の評価方法について教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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1.広大地とは
(1)広大地の定義
広大地とは、その地域における標準的な宅地の地積に比べて著しく地積が広大な宅地であり、都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合に、公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものをいいます。ただし、大規模工場用地に該当するものや、マンション等の敷地用地に適しているものは(いわゆる「マンション適地」)、広大地から除かれます。
(2)開発行為の定義
都市計画法第4条第12項に規定する開発行為とは、主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更をいいます。
(3)公共公益的施設用地の定義
公共公益的施設用地とは、道路、公園等の公共施設及び教育施設、医療施設等の公益的施設の用に供される土地をいいます。
(4)大規模工場用地の定義
大規模工場用地とは、一団の工場用地の地積が50,000㎡以上のものをいい、路線価地域においては大工場地区として定められた地域に所在するものに限ります。
(5)マンション適地とされる場合
広大地は、戸建て住宅分譲用地として開発され、その開発の際に、道路等の公共公益的施設用地が生じる宅地が対象となるものです。したがって、その宅地について経済的に最も合理的であると認められる開発行為がマンション等を建築することが目的である場合は、「マンション適地」とされて広大地に該当しません。
2.広大地の評価方法
広大地の価額は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次により計算した金額によって評価します。
(1)広大地が路線価地域に所在する場合
広大地の相続税評価額は、次の算式により計算します。
広大地の相続税評価額=広大地の面する路線価 × 広大地補正率×地積
なお、広大地補正率は、次の算式で計算します。
広大地補正率=0.6-0.05×広大地の地積/1,000㎡
(2)広大地が倍率地域に所在する場合
広大地が倍率地域に所在する場合は、その広大地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額を、2.(1)の算式中の「広大地の面する路線価」に置き換えて計算します。
(3)評価上の留意点
①2.(1)の広大地の面する路線価が2以上ある場合には、原則として、最も高いものを採用します。
②広大地として評価する宅地は、5,000㎡以下の地積のものです。したがって、広大地補正率は0.35が下限となります。
3.広大地評価の実務上の留意点
(1)取付け道路の必要性
広大地の相続税評価において、実務上しばしば問題となるのが、「区割りして戸建て分譲用地にする場合に、新たな道路の取付けが必要か」という点です。新たな道路の取付けを必要としない開発方法(いわゆる「路地状開発」)を前提に評価を行えば、公共公益的施設用地の負担が不要となり、広大地として評価する必要がありません。このため、税務当局は路地状開発を前提に宅地を評価するように主張することが多く、道路の取付けを前提に評価を行おうとする納税者との間でトラブルが生じることがあります。
(2)国税不服審判所の判断基準
国税不服審判所は、平成19年7月9日付の裁決事例で、広大地の認定をするための「道路等の公共公益的施設用地の負担が必要かどうか」の判断について、「経済的に最も合理性のある戸建住宅の分譲を行った場合において、その負担が必要になるか否かによって判断するのが相当」との考えを示しています。
さらに、「路地状開発により戸建て分譲を行うことが経済的に最も合理性のある開発に当たるかどうか」については、次の点を基に判断すべきとしています。
①路地状部分を組み合わせることによって、「その地域」における標準的な宅地の地積に分割できること。
②都市計画法等の法令に反しないこと。
③容積率及び建ぺい率の計算上有利であること。
④評価対象地を含む周辺地域において、路地状開発による戸建て分譲が一般的に行われていること。