法律相談

月刊不動産2021年12月号掲載

広告料(いわゆるAD)について

弁護士 渡辺 晋(山下・渡辺法律事務所)


Q

当社が元付けとなる賃貸仲介業務では、客付けの宅建業者が賃借人から賃料1カ月分の仲介報酬を受領し、当社は賃貸人から月額賃料の1カ月分相当額を広告料(AD)として受領しています。当社は通常の募集活動のほかに特別の広告は行っていません。このような広告料(AD)の受領は、宅建業法上許されるでしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1. 回答

     宅建業法上許されません。多くの宅建業者が誤解をしていますが、特に高額の費用を要する広告を行うなどの場合でなければ、報酬規程の範囲外で広告料を受領することは、宅建業法違反です。

  • 2. 報酬規程

    (1)報酬額の上限
     宅建業法には、宅建業者が宅地または建物の売買、交換または貸借の代理または媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる、とされています(同法46条1項)。これを受け、告示によって「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号)が定められ(同条3項。報酬規程)、宅建業者の報酬の上限額が定められています。宅地または建物の賃貸の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額の合計額は、その宅地または建物の借賃(消費税等相当額を含まない)の1月分の1.1倍に相当する金額以内です。また、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、媒介の依頼を受けるに当たって依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の1月分の0.55倍に相当する金額以内です(告示(報酬規程)第4)。宅建業者は、定められた額をこえて報酬を受けてはなりません(同条2項)。

    (2)広告の料金
     ところで告示(報酬規程)第9①には「宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関し、第2から第8までの規定によるほか、報酬を受けることができない。ただし、依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額については、この限りでない」と定められています。この条項を拠り所にして、多くの宅建業者が、所定の報酬以外に広告料(いわゆるAD)を受領しています。
     しかし報酬とは別に受領できる広告の料金については、東京高裁によって基準が明らかにされており、『一般に宅建業者が土地建物の売買の媒介にあたって通常必要とされる程度の広告宣伝費用は、営業経費として報酬の範囲に含まれているものと解されるから、本件告示第6が特に容認する広告の料金とは、大手新聞への広告掲載料等報酬の範囲内で賄うことが相当でない多額の費用を要する特別の広告の料金を意味するものと解すべきであり、また、本件告示第6が依頼者の依頼によって行う場合にだけ広告の料金に相当する額の金員の受領を許したのは、宅建業者が依頼者の依頼を受けないのに一方的に多額の費用を要する広告宣伝を行い、その費用の負担を依頼者に強要することを防止しようとしたものと解されるから、特に依頼者から広告を行うことの依頼があり、その費用の負担につき事前に依頼者の承諾があった場合又はこれと同視することのできるような事後において依頼者が広告を行ったこと及びその費用の負担につき全く異議なくこれを承諾した場合に限り、広告の料金に相当する額の金員を受領することができるものと解すべきである』とされています(東京高判昭和57.9.28判時1058号70頁)。すなわち、所定の報酬とは別に広告の料金を請求ができるのは、この東京高裁の基準に示された限定された要件を満たす場合に限られるということになります。
    現在の告示第9

  • 3. まとめ

     広告料(いわゆるAD)名目であれば、法律で定められた報酬外の金銭を賃貸人に請求することは自由であると誤解され、実務において、金銭授受が広く行われています。インターネット上には、仲介業者が、賃借人から仲介報酬1カ月を受け取ったう
    え、賃貸人からも広告料として実質的な仲介報酬を受け取るという仕組みについて、「不動産業界では常識」と、悪びれる様子もなく述べているサイトもみられます。
     しかし、法律で受領が認められる広告料は限定されています。通常の仲介業務を実施するにあたっては、仲介報酬とは別に広告の料金を受け取ることは許されません。宅建業法違反です。広告の料金を受領すれば、宅建業法上の処分を受けることにもなります。宅建業者が堂々と法令に違反する業務を行っていることは、ゆゆしき問題であり、宅建業に携わるみなさまには強く自省を求めたいと思います。

今回のポイント

●賃貸の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額の合計額は、借賃(消費税等相当額を含まない)の1月分の1.1倍に相当する金額以内である。
● 依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額については、報酬規程に定められる報酬とは別に受けることができる。
●しかし、報酬と別に受けることができる広告の料金は、大手新聞への広告掲載料等報酬の範囲内で賄うことが相当でない多額の費用を要する特別の広告の料金である。通常必要とされる程度の広告宣伝費用は、営業経費として報酬の範囲に含まれている。
●宅建業者は、定められた額をこえて報酬を受けてはならない。ADなどと称して、通常必要とされる程度の広告宣伝費用を報酬規程の範囲外で広告料を受領することは、宅建業法に違反する違法行為である。

一覧に戻る
page top
閉じる