税務相談
月刊不動産2012年11月号掲載
平成26年4月以降の消費税率の引上げについて
情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
平成26年4月より実施予定の消費税(地方消費税を含む)の税率引上げについて教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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1.消費税率の引上げ
(1)税率引上げの概要我が国の社会経済状況の変化に対応し、社会保障の安定財源を確保する観点から、消費税率の引上げを柱とする「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(以下『消費税増税法』といいます)」が、平成24年8月10日に参議院で可決、成立しました。
消費税増税法の成立により、原則、平成26年4月1日以後に行われる消費税の課税取引(以下「課税資産の譲渡等」といいます)に係る税率は8%、平成27年10月1日以後に行う課税資産の譲渡等に係る税率は10%に、それぞれ引き上げられる予定です。
(2)消費税率の引上げにあたっての措置
消費税増税法の附則18条3項では、二度にわたる消費税率の引上げを施行する前に、「経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前二項の措置(注:消費税率の引上げ前後における、我が国の経済の成長のための施策や、事前防災及び減殺等に資する分野への資金の重点配分等の検討のことをいいます)を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。」と規定されています。したがって、施行前の経済状況等によっては、税率の引上げが停止される可能性も残されています。
2.消費税率の適用時期
(1)適用時期の原則
前述1.のとおり、消費税の税率は、平成26年4月1日以後の課税資産の譲渡等は8%、平成27年10月1日以後の課税資産の譲渡等は10%に、それぞれ引き上げられる予定です。したがって、実務上は、課税資産の譲渡等の時期の判定が重要になります。国税庁の通達では、原則、商品等はその引渡日、サービスの提供はそのサービスの全部を完了した日、資産の貸付けに係る賃貸料は契約等により支払を受けるべき日が、課税資産の譲渡等の時期とされています。
ただし、課税資産の譲渡等に係る契約等が平成26年3月31日まで、または平成27年9月30日までに行われ、それぞれ平成26年4月1日以後、または平成27年10月1日以後に、その契約等に係る商品等の引渡しやサービスの提供等が行われる場合は、原則どおりに各引上げ後の税率を適用すると、事務処理が煩雑になり、商取引に支障をきたすおそれもあります。そこで、消費税増税法では附則に経過措置規定を設け、一定の条件を満たす場合には引上げ前の税率を適用するとしています(消費税増税法附則5条、16条)。
以下、消費税増税法の経過措置規定のうち、皆様の関心が高い、建物工事の請負代金に係る消費税の取扱いについて解説をします。
(2)工事の請負代金に係る経過措置
①5%税率が適用される場合
事業者が平成25年9月30日までに締結した工事の請負に係る契約に基づき、平成26年4月1日以後に、その契約に係る建物などの資産の引渡し等を行う場合、その工事代金等に係る消費税については、5%の税率が適用されます。この場合において、平成25年10月1日以後に、その契約に係る工事代金等が増額されたときは、その増額される前の代金等に相当する部分に限って、5%の税率が適用されます。
②8%税率が適用される場合
事業者が平成25年10月1日から平成27年3月31日までの間に締結した工事の請負に係る契約に基づき、平成27年10月1日以後にその契約に係る建物などの資産の引渡し等を行う場合には、その工事代金等に係る消費税については、8%の税率が適用されます。この場合において、平成27年4月1日以後にその契約に係る工事代金等が増額されたときは、その増額される前の代金等に限って、8%の税率が適用されます。
③事例による「5%税率が適用される場合」の解説
例えば、平成25年8月1日に住宅の新築工事(工事代金5,000万円)に係る請負契約を締結し、同年12月1日に追加工事(追加工事代金1,000万円)契約を締結、平成26年4月10日に住宅が完成して引渡しを受けた場合、当初契約の代金5,000万円については、平成25年9月30日までに契約を締結しているので、5%の税率が適用されます。
これに対し、追加工事契約の代金1,000万円については、平成25年9月30日より後に契約を締結しているので、8%の税率が適用されることになります。