税務相談
月刊不動産2014年5月号掲載
平成26年度税制改正:相続土地を譲渡した場合の譲渡所得の取得費加算特例の改正
情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
平成26年度税制改正により見直しが行われた、個人が相続により取得した土地を譲渡した場合の相続税の取得費加算の特例について教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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1.相続により取得した資産を譲渡した場合の譲渡所得の特例(相続税の取得費加算の特例)
個人が資産を譲渡した場合、その譲渡益は譲渡所得とされ、所得税、復興特別所得税と住民税が課されます。譲渡所得の金額は、譲渡収入金額からその資産の取得価額(取得費)と譲渡費用を控除して計算します。
個人が相続または遺贈(以下「相続等」といいます)により取得し、相続税の課税対象となった土地その他の資産を相続税の申告期限から3年以内に譲渡した場合には、譲渡所得の金額の計算上、その譲渡した人に係る相続税のうち一定の額(以下「取得費加算額」といいます)が、譲渡した資産の取得費に加算されます。これを「相続税の取得費加算特例」といいます。この特例を使うことにより譲渡所得が少なくなりますので、税金の納税による手取金額の減少を抑えることができます。
2.取得費加算額の計算
(1)平成26 年までに開始した相続等により取得した資産(土地等)を譲渡した場合
取得費加算額は、譲渡する相続財産が土地または土地に存する権利(土地等)であるかどうかによって、次の①または②の算式により計算します。
①譲渡する相続財産が土地等以外の場合
譲渡者が納付した相続税額 × 譲渡者が相続した財産のうち譲渡資産に係る相続税評価額 ÷ 譲渡者が相続した財産に係る相続税評価額の合計額(債務控除前)= 取得費加算額
②譲渡する相続財産が土地等の場合
譲渡者が納付した相続税額 × 譲渡者が相続した土地等の相続税評価額 ÷ 譲渡者が相続した財産に係る相続税評価額の合計額(債務控除前)= 取得費加算額なお、相続した土地等の中に、物納した土地等または物納申請中の土地等がある場合には、それらの土地等は算式の分子のすべての土地等から除かれます。
譲渡する相続財産が土地等である場合(②)は、譲渡する相続財産が土地等以外の資産である場合(①)と異なり、譲渡していない土地等に対応する相続税額も譲渡収入金額から控除されることになります。相続した土地等を譲渡しようとする相続人がいる場合には、その相続人が譲渡予定の土地以外の土地も合わせて相続するように遺産分割を工夫することにより、取得費加算額を増加させ、譲渡所得税・住民税を軽減することができます。
(2)平成27年以後に開始する相続等により取得した資産(土地等)を譲渡した場合(平成26年度改正)
①改正の概要
平成26年度税制改正により、上記 (1)の加算額の計算のうち、②の場合の計算方式がなくなり、相続税の取得費加算額の計算は、すべての相続財産につき①の計算に一本化されます(その点以外の改正はありません)。
土地等を申告期限から3年以内に譲渡した場合でも、その譲渡所得の金額の計算において取得費に加算できる相続税額は、土地等以外の相続財産を譲渡した場合と同様に、その譲渡した土地等に対応する部分に限定されることになります。この改正は、平成27年1月1日以後に開始する相続等により取得した資産(土地等)の譲渡について適用されます。
②改正が行われた理由
相続税の取得費加算特例が昭和45年に創設された当時、取得費加算額は譲渡資産を土地等と土地等以外の資産とに区別せず、上記(1)①の算式により計算した金額のみとされていました。地価の高騰などを背景に、平成5年度の税制改正で、相続財産である土地等を譲渡した場合の取得費加算額は、上記(1)②の算式により計算することとされていましたが、地価の高騰が鎮静化したことなどから、平成26年度改正により、平成5年度改正前の取扱いに戻されることになったわけです。
3.適用を受けるための手続
相続税の取得費加算特例の適用を受けるためには、次の手続を行う必要があります。
(1)特例を受けようとする年分の所得税の確定申告書を提出すること。
(2)(1)の確定申告書に次の書類を添付すること。
① 「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」
②「相続税の申告書(第1表、第11表、第11表の2表、第14表、第15表)の写し」
③譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書[ 土地・建物用])