税務相談

月刊不動産2007年5月号掲載

平成19年度税制改正・『マイホームの買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例』の延長」

情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

平成19年度の税制改正で、「マイホームの買換えの際に譲渡損失がある場合の譲渡所得の特例」が3年延長されたという話を聞きましたが、どのような特例でしょうか

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1.特例のあらまし

    (1)制度の概要

     平成16年以後、土地建物等に係る譲渡所得の計算上生じた損失について、他の所得との損益通算が禁止されています。ただし、居住用不動産の譲渡損失については、一定の要件の下で損益通算や翌年以降の損失の繰越控除を認める特例が設けられています。

    (2)適用要件

     個人が平成21年12月31日までの間に、売却年1月1日において所有期間が5年超の居住用不動産(譲渡資産)を売却した場合で、その売却年の前年の1月1日からその売却年の翌年12月31日までに、(4)の適用対象となる買換資産の取得をし、その取得年の12月31日において、その買換資産に係る契約償還期間が10年以上の住宅借入金等を有し、かつ、その取得年の翌年12月31日までの間に居住の用に供するとき又は供する見込みであるとき等、一定の要件を満たす場合は、その居住用不動産の売却に係る損失の金額を、一定の計算の下で、その年の他の所得と損益通算することができます。

     また、その損失を控除しきれなかった場合は、一定の要件の下でその譲渡の年の翌年以後3年間繰り越すことにより、各年分の所得から控除することができます。

    (3)適用対象となる譲渡資産

     個人が有する家屋又は土地等でその年の1月1日において所有期間が5年を超えるもののうち次に掲げるものをいいます。

     (a) その個人がその居住の用に供している家屋で国内にあるもの

     (b) (a)の家屋でその個人の居住の用に供されなくなったもの。ただし、居住の用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡されたものに限ります。

     (c) (a)又は(b)の家屋及びその家屋の敷地の用に供されている土地等

     (d) (a)の家屋が災害により滅失した場合において、その家屋を引き続き所有していたならば、その年の1月1日において所有期間が5年を超えるその家屋の敷地の用に供されていた土地等。ただし、その災害があった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡されたものに限ります。

    (4)適用対象となる買換資産

     個人が居住の用に供する家屋で次に掲げるもの又はその家屋の敷地の用に供する土地等で、国内にあるものをいいます。

     (a) 一棟の家屋の床面積のうち、その個人が居住用に供する部分の床面積が50㎡以上であるもの

     (b) 一棟の家屋のうち独立部分を区分所有する場合には、独立部分の床面積のうち、その個人が居住の用に供する部分の床面積が50㎡以上であるもの

    (5)適用対象となる住宅借入金等

     この特例の対象となる買換資産にかかる住宅借入金等とは、譲渡者が金融機関やその勤務先から借り入れた、償還期間が10年以上の割賦償還により返済される一定の借入金等(利息に対応するものを除く)をいいます。

    2. 適用除外となる場合

     (a) 損益通算しようとする年の前年以前3年以内の年において生じた他の特定居住用不動産の譲渡損失の金額について、この特例の適用を受けている場合

     (b) 譲渡資産の特定譲渡をした年の前年又は前々年において行った資産の譲渡について、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の軽減税率の特例、居住用財産の譲渡所得の3,000万円の特別控除又は特定の居住用財産の買換え等の場合の長期譲渡所得の課税の特例の特例の適用を受けている場合

     (c) 譲渡資産の特定譲渡をした年又はその年の前年以前3年内における資産の譲渡について、特定居住用財産の譲渡損失の損益通算の特例の適用を受ける又は受けている場合

     (d) 居住用不動産の譲渡損失の金額が生じた年の翌年以降3年以内の各年分のうち、合計所得金額が3,000万円を超える年分

    2.住宅ローン控除との併用

     この特例は、住宅ローン控除との併用が可能です。

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