税務相談
月刊不動産2006年3月号掲載
平成18年度税制改正 (2)(後編)
代表社員 税理士 玉越 賢治(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
昨年末に「平成18年度税制改正大綱」が発表されましたが、前回解説の不動産関連税制以外の部分について、その概要を説明してください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
-
前回に続き今回は、不動産関連税制以外の部分で主要な項目を解説します。
1. 役員報酬の見直し
(1) 同族会社の役員給与の一部損金不算入
次のA及びBの要件を満たす法人を主宰する役員の給与のうち、給与所得控除額相当額は損金の額に算入されなくなります。A 同族会社の業務を主宰する役員及びその同族関係者等が、発行済株式の総数の90%以上の数の株式を所有していること
B 同族会社の業務を主宰する役員及びその同族関係者等が、業務に従事する役員の過半数を占めていること
ただし、所得・給与の金額が、下記A又はBに該当する同族会社については適用されません。
A 同族会社の所得等の金額(所得金額と所得金額の計算上、損金算入された当該給与の額の合計額)の直前3年以内に開始する事業年度における平均額が年800万円以下である場合
B Aの同族会社の所得等の金額の直前3年以内に開始する事業年度における平均額が年800万円超3,000万円以下であり、かつ、当該平均額に占める当該給与の額の割合が50%以下である場合
(2) 役員賞与の損金算入
法人がその役員に対して支給する給与のうち、1月以下の期間を単位として定期的に同一の額を支給する給与に加え、次の給与(賞与)の額は、原則として、損金の額に算入されることになります。A 利益を基礎として算定される給与以外の給与のうち、確定した時期において確定した額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与
B 利益を基礎として算定される給与のうち、非同族法人が業務を執行する役員に対して支給する給与で、当該事業年度において損金経理をしていること、算定方法につき報酬委員会における決定等の適正な手続がとられていること、有価証券報告書等で開示されていること、その他一定の要件を満たすもの。
2. 同族会社の留保金課税
同族会社の留保金課税制度について、次のように見直しが行われます。(1) 同族会社の判定
留保金課税の対象となる同族会社であるかどうかの判定基準について、同族関係者3株主グループで株式等の50%超保有から、1株主グループで50%超保有に改正します。(2) 留保控除額
留保控除額を次に掲げる金額のうち最も多い金額とします。
A 所得等の金額の40%(中小法人にあっては、50%)相当額B 年2,000万円
C 利益積立金額が資本の金額の25%に満たない場合における、その満たない部分の金額相当額
D 中小法人において自己資本比率(自己資本(同族関係者からの借入金を含む。)/総資産)が30%に満たない場合におけるその満たない部分の金額相当額
※ AとDにおける中小法人とは、資本の金額が1億円以下の法人をいいます。(3) 中小企業新事業活動促進法の承認を受けた中小企業者の不適用
中小企業事業活動促進法の経営革新計画の承認を受けた中小企業者がその計画に従って経営革新のための事業を実施している各事業年度(平成18年4月1日から平成20年3月31日までの間に開始する各事業年度に限る)については、留保金課税制度は不適用となります。(4) 中小企業者等に対する不適用制度の廃止
設立後10年以内の中小企業者や自己資本比率50%以下の中小法人についての留保金課税不適用制度は、適用時期の到来をもって廃止されます。3. 公示制度の廃止
所得税、相続税、贈与税、法人税及び地価税の申告書に係る公示制度は平成18年4月1日以後廃止されます。