税務相談
月刊不動産2004年2月号掲載
平成16年度税制改正のポイント
代表社員 税理士 玉越 賢治(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
昨年末に「平成16年度税制改正大網」が発表されましたが、そのうち不動産税制に係る部分について説明してください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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●住宅税制(個人)
1.住宅ローン控除
現行の住宅ローン控除制度(最大控除額500万円)は1年間延長され平成16年12月31日までの入居者に適用される。平成17年以降は控除対象限度額及び控除率が段階的に縮減されることになった。2.特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除
この特例は、所有期間5年超の居住用資産の譲渡に係る譲渡損失の金額を、その譲渡資産の譲渡による所得以外の所得との通算及び翌年以降3年以内の客年分への繰越控除を認めるものである。(1)買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除の延長・拡充
適用期限を平成18年12月31日までの譲渡に延長し、譲渡資産に係る住宅ローン控除残高がない場合も適用対象に加えた。(2)譲渡損失の繰越控除の創設
平成18年12月31日までの譲渡について、譲渡資産に係る一定の住宅借入金等を有する場合、損益通算後の譲渡損失の翌年以降3年内の客年分への繰越控除を認めるものである。(1)と違い買換え要件はなく、譲渡資産に係る一定の住宅借入金等の金額からその譲渡資産の譲渡対価の額を控除した残額が限度で、合計所得金額3,000万円以下である年分に限られる。(表)
●土地税制
平成16年1月1日以後の譲渡について適用される。1.長期譲渡所得の100万円控除の廃止(個人)
2.長期譲渡所得の課税の特例(個人)
土地・建物等の譲渡について、特別控除後の譲渡益に対する税率を26%から20%(所得税15%、住民税5%)に引き下げる。3.優良住宅地造成等のための土地等の譲渡特例(個人)
土地等の特別控除後の譲渡益2,000万円以下の部分について20%から14%(所得税10%、住民税4%)、2,000万円超の部分について26%から20%(所得税15%、住民税5%)へ引き下げる。4.短期譲渡所得の課税の特例(個人)
譲渡益の52%相当額又は全額総合課税をした場合の上積税額の110%相当額のいずれか多い方の税額から、譲渡益の39%(所得税30%、住民税9%)相当額へ引き下げる。
ただし、国等に対する譲渡については譲渡益の26%相当額又は全額課税した場合の上積税額のいずれか多い方の税額から、譲渡益の20%(所得税15%、住民税5%)相当額とする。5.譲渡損失の損益通算及び繰越控除の廃止(個人)
個人の平成16年度分以後の土地・建物等の譲渡について、長期譲渡所得の金額又は短期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額については、土地・建物等の譲渡による所得以外の所得との損益通算及び翌年以降への繰越控除を認めない。
この制度の施行により、個人がバブル時代に取得した不動産を整理する場合のタックススキームが組みにくくなった。6.業務用資産の買換えの場合等の課税の特例(個人・法人)
国内にある所有期間10年超の土地等・建物等を譲渡して国内にある土地等・建物等へ買い換えた場合、譲渡益の80%を繰り延べる制度(所得税・措法37条①二十一、法人税:措法65条の7①二十二)の適用期限を平成18年12月31日まで延長する。この制度の適用を受けることにより、一号買換えといわれる既成市街地等内から外への買換え制度の適用を受けるケースは引き続きない。