法律相談

月刊不動産2021年08月号掲載

専任の宅建士による業務管理者の兼務

弁護士 渡辺 晋(山下・渡辺法律事務所)


Q

私は勤務先の不動産会社で専任の宅建士を務めています。今般、当社は賃貸住宅管理業者の登録を申請しますが、賃貸住宅管理業者の登録には、業務管理者の選任が必要とききました。私が業務管理者を兼務することができるのでしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1. 回答

     宅地建物取引業法(以下「宅建業法」)上の専任の宅建士が賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(以下「賃貸住宅管理業法」)上の業務管理者になることは禁止されていません。業務管理者を兼務することができます。

  • 2. 賃貸住宅管理業法の制定

    (1)賃貸住宅管理業者の業務管理者の設置義務
     賃貸住宅管理業法が制定され、2021(令和3)年6月からは、賃貸住宅管理業を営むためには、200戸以上の賃貸住宅を管理する管理業者は、国土交通大臣の登録を受けなければならないことになりました(賃貸住宅管理業法3条1項、同法施行規則3条。経過措置として1年間猶予。同法附則2条1項)。
     登録を受けた管理業者には、営業所または事務所ごとに、1人以上の業務管理者の設置が義務づけられます(同法12条1項)。業務管理者がいなければ、管理受託契約を締結することはできません( 同法1 2 条2項)。業務管理者を選任せず、または、業務管理者がいないのに管理受託契約を締結した場合、30万円以下の罰金に処せられます(同法44条2号・3号)。
     業務管理者がほかの営業所または事務所の業務管理者となることは禁じられています(同法12条3項)。

    (2)業務管理者の役割
     賃貸住宅管理業法上、業務管理者の役割は、賃貸住宅管理業者の業務の管理および監督を行うことです(同法12条1項)。管理および監督の対象業務については、①重要事項説明および書面の交付、②契約締結時書面の交付、③賃貸住宅の維持保全の実施、④賃貸住宅に係る家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理、⑤帳簿の備付け等、⑥定期報告、⑦秘密の保持、⑧賃貸住宅の入居者からの苦情の処理などと定められています(同法施行規則13条)。

  • 3. 宅建業法による専任の取引士の設置

     ところで、宅建業法は、購入者の利益保護や宅地建物の流通円滑化を図るために様々なルールを定めています。このルールの中で重要な役割を担っているのが、宅建士です。宅建業者は、宅地建物を取得し、または借りようとしている者に対し、宅建士をして、重要な事項について、重要事項説明書を交付して説明させなければなりませんし(宅建業法35条1項)、重要事項説明書や契約成立後に交付すべき書面には、宅建士の記名押印が必要です(同法35条5項、同法37条3項)。宅建業者には、事務所・案内所等ごとに、宅建業者の業務に従事する者の数に対して5分の1以上となる数の専任の取引士の設置が義務付けられています(同法31条の3第1項、同法施行規則15条の5の3)。

  • 4. 専任の宅建士と業務管理者の兼務

    (1)宅建士の専任性
     宅建士の日常的な業務での役割の重要性に鑑み、宅建業者の事務所・案内所等に置かれる宅建士は、専任でなければならないものとされています(宅建業法31条の3)。
     専任とは、宅建業を営む事務所に常勤(通常の勤務時間において勤務すること)して、専ら宅建業に従事する状態です。宅建業の事務所が建築士事務所、建設業の営業所等を兼ねており、事務所の宅建士が建築士法、建設業法等の法令により専任を要する業務に従事するなどの場合には、他の業種の業務量等を斟酌のうえで許されているものを除き、その宅建士について、専任の宅建士とは認められません。もっとも、一時的に宅地建物取引業の業務を行っていない間であれば、専任の宅建士が他の業種に係る業務に従事することは可能とされています。

    (2)賃貸住宅管理業者の業務管理者の兼務
     さて、専任の宅建士と業務管理者を兼ねることができるかどうかに関しては、国土交通省は、賃貸住宅管理業法上の業務管理者を兼務することは差し支えないという考え方を採っています(以上、宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方31条の3第1項関係3)。専任の宅建士が、業務管理者としての賃貸住宅管理業に係る業務に従事することは可能です。
     なお、業務管理者が宅建士を兼務する場合には、入居者の居住の安定の確保等の観点から、賃貸住宅管理業者の従業員が行う管理業務等について必要な指導、管理、および監督の業務に従事できる状態にあることが必要です(賃貸住宅の解釈・運用の考え方第12条関係2)。

今回のポイント

● 賃貸住宅管理業法が制定され、200戸以上の賃貸住宅を管理する管理業者は、国土交通大臣の登録を受けなければならないことになった。登録を受けた管理業者は、営業所または事務所ごとに、1人以上の業務管理者を設置しなければならない。
● 業務管理者がほかの営業所または事務所の業務管理者となることは禁じられている。
● 宅建業者には、事務所・案内所等ごとに、宅建業者の業務に従事する者の数に対して5分の1以上となる数の専任の取引士の設置が義務付けられている。
● 宅建業における専任の取引士というときの専任とは、宅建業を営む事務所に常勤することである。
● 宅建業を営む事務所における専任の宅建士が賃貸住宅管理業法によって選任される業務管理者を兼務することは禁止されていない。

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