税務相談
月刊不動産2008年10月号掲載
定期借地権とその底地の相続税評価について
情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
定期借地権と定期借地権が設定されている土地 (底地) の相続税評価について教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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1. 定期借地権の相続税評価
(1) 評価の方法
定期借地権は、原則として課税時期において借地人に帰属する経済的利益及びその存続期間を基に評価します。ただし、定期借地権の設定時と課税時期で借地人に帰属する経済的利益に変化がない等、課税上弊害がない場合に限り、次の算式で評価できます。
《算式》
定期借地権の評価額 =
定期借地権の目的となっている宅地の自用地評価額×(① ÷ ②)×(③ ÷ ④)①定期借地権等の設定時に受ける経済的利益の総額
②定期借地権等の設定時の宅地の通常の取引価額
③課税時期における定期借地権等の残存期間年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率
④定期借地権等の設定期間年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率
(2) 経済的利益の総額の計算
(1)の算式の「定期借地権者に帰属する経済的利益の総額」は、次の①から③の金額の合計額となります。
①定期借地権等の設定に際し、借地権者から借地権設定者に対し、権利金など借地契約の終了時に返還しない金銭の支払又は財産の供与がある場合は、課税時期において支払われるべき金額又は供与すべき財産の価額に相当する金額
②定期借地権等の設定に際し、借地権者から借地権設定者に対し、保証金など借地契約の終了時に返還が必要な金銭等の預託があった場合において、その保証金等につき基準年利率未満の約定利率による利息の支払があるとき又は無利息のときは、保証金等の額を基に一定の算式により計算した金額
③定期借地権等の設定に際し、実質的に贈与を受けたと認められる差額地代の額がある場合は、差額地代の額を基に一定の算式により計算した金額
2.定期借地権の底地の相続税評価
(1) 原則的な評価方法
定期借地権の目的となっている宅地の価額は、原則として宅地の自用地評価額から、1. で評価したその定期借地権の価額を控除した金額により評価します。
ただし、1. で評価した定期借地権の価額が、その宅地の自用地としての価額に、次に掲げる定期借地権の残存期間に応じる割合を乗じて計算した金額を下回る場合には、次のその宅地の自用地評価額からその価額に、次に掲げる割合を乗じて計算した金額を控除した金額により評価します。
《算式》
定期借地権の底地の評価額 =
自用地評価額 - 自用地評価額 × 定期借地権の残存期間に応じた次の①から④のいずれかの割合①残存期間が 5 年以下のものは、5%
②残存期間が 5 年超 10 年以下のものは、10%
③残存期間が 10 年超 15 年以下のものは、15%
④残存期間が 15 年超のものは、20%
(2) 一般定期借地権の底地の評価
一般定期借地権とは、公正証書等の書面により借地期間を50年以上とし、借地期間満了により借地権が確定的に終了するものをいいます。一般定期借地権の場合、契約期間が50年以上となりますので、(1)より評価額が低くなるように調整が図られています。
具体的には、借地権割合の地域区分のうち、次に定める地域区分に存する一般定期借地権の目的となっている宅地の価額は、自用地としての価額から「一般定期借地権の価額に相当する金額」を控除した金額により評価します。ただし、一般定期借地権の借地権者と地主の関係が親族間や同族法人等の場合など課税上弊害がある場合には、(1)の方法により評価します。
「一般定期借地権の価額に相当する金額」とは、次の算式により計算した金額をいいます。
《算式》
一般定期借地権の価額に相当する金額 = 自用地評価額×(1 - 底地割合)× ① ÷ ②①課税時期におけるその一般定期借地権の残存期間年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率
②一般定期借地権の設定期間年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率
なお、 「底地割合」は、国税庁が借地権割合に応じ、55%から75%までの範囲で定めています。 「基準年利率」 「複利年金現価率」も、国税庁が公表しています。