法律・税務・賃貸Q&A

定型約款

弁護士 渡辺 晋
山下・渡辺法律事務所

質問

民法改正によって、定型約款という制度ができたと聞きました。どのような制度なのでしょうか。また、不動産取引とはどのように関わるのでしょうか。

月刊不動産2021年02月号掲載
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回答

1. 回答

 民法では、①不特定多数の者を相手方として行う、②その内容の全部または一部が画一的であることが双方にとって合理的である、という2つの要件を満たす取引を「定型取引」と定義したうえで、定型取引を行うために準備された条項の総体を「定型約款」としています。定型約款については、法定の要件を満たせば、個別の条項について顧客との合意がなくても、定型約款を契約内容とする合意をしたものとみなされ(民法548条の2)、また、相手方と合意をすることなく、契約内容を変更することができます(同法548条の4)。
 不動産取引との関連でみれば、不動産の売買契約や不動産取引のための媒介契約のために準備された契約書の条項が定型約款に該当することはありませんが、住宅ローン取引の契約書のひな型については、定型約款に該当します。

2. 定型約款の制度の趣旨

 さて、現代社会では、大量の取引を迅速・安全に行うために、多種多様な取引において詳細な取引条件を定めた約款が多く用いられています。そのため、2020(令和2)年4月の民法改正によって、定型約款の制度が創設されました。
 定型約款については、あらかじめ契約の内容とする旨を相手方に表示していれば、個別の条項について意思が合致しなくても、契約が成立したものと扱われ(同法548条の2第1項2号)、また、契約内容の変更についても、相手方の一般の利益に適合するなどの場合には、具体の条項の合意をせずに、契約内容を変更することが可能になります(同法548条の4)。
 もっとも、定型取引を行い、または行おうとするときに、相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければなりません(同法548条の3第1項)。また、相手方の権利を制限し、または義務を加重する条項であって、信義誠実の原則に反して相手方の利益を一方的に害するものについては、合意をしなかったとみなされます(同法548条の2第2項)。

3. 不動産取引における定型約款の適用

 定型約款と扱われるかどうかは、行おうとする取引が定型取引に該当するかどうかによります。たとえば、不動産の売買契約や不動産取引のための媒介契約についてみれば、一般的には、特定の相手方と特定の不動産を対象として行われますから、不特定多数を相手方とする取引ではなく、また、契約内容を画一的なものとすることが双方にとって合理的ともいえないので、定型取引には該当しません。したがって、契約書の条項について、不動文字で印刷したひな型を準備していても、定型約款にはあたりません。
 これに対して、住宅ローンについてみると、貸付額は個別の顧客の収入や購入対象の不動産の価値によって異なるものの、貸付けの判断は取引相手の資質などの個性に着目するのではなく、決められたモデルに従って機械的に行われており、不特定多数の者を相手方として行う取引といえます。また、貸付条件については顧客のニーズや借入期間によって様々なプランがありますが、金融機関からみると、同一のプランを選択した顧客間との契約内容を画一的に取り扱うことに合理性があり、これは顧客の側からみても、金融機関が画一的な契約管理によって、利率や手数料等の取引コストが低減するという利益を享受することができます。したがって、住宅ローン取引は、通常、定型取引であり、住宅ローン取引の契約書のひな型は定型約款にあたります。

4. まとめ

 宅建業者が日常的に取り扱う契約関係では、定型約款となるものは多くありません。しかし、定型約款の制度は、契約の根幹に関わる新しい制度です。また、宅建業者としては、住宅ローンの取扱いを熟知しておかなければならないことも当然です。この機会に、定型約款の仕組みを確認しておいていただきたいと思います。

今回のポイント

●2020(令和2)年4月の民法改正によって、定型約款の制度が創設された。
●定型約款は、定型取引を行うために準備された条項の総体である。定型取引は、不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部または一部が画一的であることが双方にとって合理的なものをいう。
●定型約款を契約の内容とする旨をあらかじめ表示しておけば、個別の条項の合意をしなくても、合意があったとみなされる。
●住宅ローン取引は、定型取引であり、したがって、住宅ローン取引の契約書のひな型は定型約款にあたる。

※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

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