税務相談
月刊不動産2010年7月号掲載
宅地の相続税評価について
情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
宅地の相続税評価について教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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1.相続税・贈与税における宅地の評価方法
(1)宅地の相続税評価方法
相続税や贈与税の計算上、宅地は原則として相続・贈与時点での時価により課税されます。税務申告において、宅地の時価は財産評価基本通達に基づいて評価します。財産評価基本通達では、宅地の評価方法として路線価方式と倍率方式が設けられています。宅地をどちらの評価方式で評価するのかを判定するためには、財産評価基準書で確認します。路線価方式によるべき旨が記載されている場合には、宅地の所在地の路線価図を調べます。
財産評価基準書と路線価図は、税務署に備え付けられているほか、国税庁のホームページで閲覧できます。
(2)路線価方式により宅地評価
路線価方式は、路線価が定められている地域の土地の評価方法です。
相続税や贈与税の宅地評価に用いる路線価とは、国税庁が設定する道路に付された宅地の1㎡当たり金額のことです。路線価は、おおむね宅地の公示価格の80%相当額で設定され、その年の7月頃に国税庁より公表されています。
路線価方式における土地の評価額は、路線価をその土地の形状等に応じた奥行価格補正率などの各種補正率で補正した後に、その土地の面積を乗じて計算します。
(3)倍率方式による宅地評価
倍率方式は、路線価が定められていない地域の土地の評価方法です。倍率方式における土地の価額は、その土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算します。
固定資産税評価額に乗じる倍率は、評価する土地の所在地別に、(1)の財産評価基準書に記載されています。
2.路線価方式による宅地の評価のポイント
宅地は、利用形態によって自用地・貸家建付地・貸宅地に区分されます。評価方法もその利用形態によって異なることになります。
(1)自用地とは
自用地とは、自己が使用している宅地をいいます。第三者に貸している宅地であっても無償である場合には、自用地評価となります。
評価対象の宅地が接している道路の路線価に、その宅地の地積(㎡)を乗じて計算した金額に各種の補正を加えた金額が、自用地の評価額になります。
(2)貸宅地とは
貸宅地とは、借地権の目的となっているほかに貸している宅地をいいます。貸地の評価は、自用地評価額から借地権評価額を控除した価額となります。
(3)貸家建付地とは
貸家建付地とは、貸家の目的とされている宅地、すなわち、所有する宅地に建築した家屋をほかに貸し付けている場合の、その宅地のことをいいます。
貸家家屋には借家人の権利(借家権)があり、敷地の処分や利用が制限されます。したがって、その敷地の評価については、自用地評価額から引下げが行われます。貸家建付地の評価額は、「貸家建付地=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」の算式により計算します。この算式中の「借地権割合」は、地域により異なりますので、路線価図により該当地の路線価を確認する必要があります。「借家権割合」は30%となります。
なお、貸家が空室の場合は、敷地の利用を制限する借家人がいないので減額をせず、自用地として評価します。
(4)借地権とは
建物の所有を目的とする地上権又は宅地の賃借権を借地権といいます。借地権は、借地借家法によりその存続期間が保証され、借地期間が満了しても地主側に正当理由がなければ更新されます。すなわち、借地権は一つの権利として価値があり、相続税・贈与税の課税対象財産とされます。
借地権には、①旧借地法に基づく借地権、②借地借家法に基づく普通借地権、③借地借家法に基づく一般定期借地権、④借地借家法に基づく建物譲渡特約付借地権、⑤借地借家法に基づく事業用借地権、⑥借地借家法に基づく一時使用目的の借地権の6つの借地権が存在します。借地権を評価する場合、これらの借地権のうち①②を「借地権」、③~⑥を「定期借地権等」として区分しています。
借地権の評価額は、借地権の目的となっている宅地が自用地(更地)であるとした場合の評価額に借地権割合を乗じて求めます。この借地権割合は、地域ごとに定められており、路線価図で確認する必要があります。