税務相談

月刊不動産2010年9月号掲載

外国人が日本の不動産を所有する場合の税務

情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

外国人が日本国内の不動産を所有する場合の所得税・住民税・固定資産税の取扱いを教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1.所得税の取扱い

    (1) 原則

     所得税は所得(利益)に対して課税されます。不動産を所有しているだけでは課税されません。不動産を賃貸して不動産所得が発生する場合と、不動産を売却して譲渡所得が発生する場合については、所得税の課税が発生します。

     日本国内に居住する個人については、国内・国外のすべての所得が課税対象になりますが、海外に居住する個人については、日本国内から生じる所得だけが課税の対象になります。

    (2) 外国人が海外に居住する場合の取扱い

    ①課税のしくみ

     海外に居住する外国人についても、日本国内に所在する不動産の不動産所得は、原則として賃料の20%の源泉所得税を徴収された上で、確定申告を行う必要があります。

     日本国内に所在する不動産を売却し譲渡所得が発生する場合にも、原則として譲渡対価の10%の源泉所得税を徴収された上で、確定申告を行う必要があります。

     不動産所得の計算方法や譲渡所得の計算方法は、通常の所得税の計算方法とおおむね同じです。異なる点は、源泉所得税が徴収されることと、所得控除が雑損控除・寄付金控除・基礎控除に限られることです。源泉所得税は確定申告で精算されますので、最終的には、海外に居住する外国人も日本国内に居住する外国人と同額の所得税の負担をすることになります。

    ②納税管理人の選任

     外国人が海外に居住する場合は、日本国内で所得税の申告や納税の手続を本人に代わって行う納税管理人を選任する必要があります。

    (3) 外国人が日本国内に居住する場合の取扱い

     所得税では住民登録や国籍にかかわらず、居住の実態で居住形態を判断します。日本国内に所在する不動産から生じる所得に限定すれば若干手続に違いがありますが、日本に居住する外国人も海外に居住する外国人も所得税の取扱いは同じになります。

    2.住民税の取扱い

    (1) 外国人が海外に居住する場合

     住民税は、所得に対して課される所得割と所得の有無にかかわらず課される均等割の2つで構成されます。

    ①所得割の取扱い

     住民税の所得割は、賦課期日である1月1日現在において日本国内に住所を有する個人に対して賦課されます。このため、海外に住所を有する外国人については、不動産所得や譲渡所得に対する住民税の所得割は発生しないことになります。

    ②均等割の取扱い

     住民税の均等割は、賦課期日において日本国内に住所を有しない場合でも、日本国内に自己の居住目的の家屋敷を所有していれば賦課されます。

    (2) 外国人が日本国内に居住する場合

     日本国内に住所を有しない外国人については、日本国内に賦課期日まで引き続いて1年以上滞在している場合には、住民税の所得割が賦課されます。

     また日本国内に賦課期日までの滞在期間が1年に満たない場合においても、日本国内に1年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合や、日本国籍を取得し、若しくは永住許可を受け、かつ、日本国内に配偶者等の生計を一にする親族が居住している場合等の一定の要件に該当する場合には、住民税の所得割が賦課されます。

    3.固定資産税の取扱い

    ①課税のしくみ

     固定資産税は、賦課期日である1月1日現在の不動産の所有者に対して賦課されます。固定資産税は、所有者の居住形態にかかわらず賦課されますので、外国に居住する外国人も納付する必要があります。

    ②納税管理人の選任

     外国人が海外に居住する場合は、固定資産税の納税に関する一切の事項を本人に代わり行わせるために、不動産の所在地の地方公共団体の条例で定める地域内に住所等を有する納税管理人を選任する必要があります。

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