法律相談
月刊不動産2002年6月号掲載
土地取引の中に数量指示売買というものがあるようですが、どのような内容でしょうか。
弁護士 草薙 一郎()
Q
土地取引の中に数量指示売買というものがあるようですが、どのような内容でしょうか。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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【A】
裁判所の示した定義によると、いわゆる数量指示売買とは、当事者において目的物の実際に有する数量を確保するため、その一定の面積、容積、重量、員数又は尺度があることを売主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が定められた売買をいう、とされています。
つまり、土地取引の場合ですと、一坪当たりの単価がいくらであり、面積が何坪であるから代金は合計いくらとなるというようなケースが数量指示売買のケースと言えるでしょう。【Q】
数量指示売買に該当するときの関係条文を教えて下さい。【A】
民法565条に数量指示売買が規定されていますが、条文上では買主が面積など、数量の不足を知らないことを前提としています。
買主が知らなかった場合ですが、準用されている同563条によって、買主は代金減額を売主に請求することが可能になります。
また、数量が不足したため売買をした意味がないようなときは、買主に契約の解除権が認められます。そして、代金減額又は解除のいずれのケースにも売主に対する損害賠償請求が可能とされています。
ただし、これらの権利を行使するためには、数量不足を知ってから1年内であることが要求されています(同564条)。【Q】
買主が数量不足を知っていたときはどうなのでしょうか。【A】
数量不足を知って代金を決めているのですから、買主を保護する必要がありません。
したがって、前記の各権利は買主には生じません。【Q】
ところで、数量指示売買についての判例が最近出されたと聞きましたが、どんな内容でしょうか。【A】
平成13年11月22日の最高裁判所の判決でしょう。
事案は仲介業者が売主、買主双方の媒介をとりつけ、土地の売買をしたケースです。
買主は公簿面積と坪単価を業者から知らされ、坪単価を安くしてもらうよう依頼し、売主もこれに応じて坪単価を値下げしました。
そして、売買へと至るわけですが、この間、媒介契約書には公簿面積が実測面積として記載されており、買主より実測図の提出を求められたものの、業者より面積が付記された公図の写しを交付されたことで、買主は公簿面積が実測面積と誤解し、それ以上の要求はしませんでした。
そうして売買契約になるわけですが、契約書には物件表示に面積は公簿によると記載されているだけで、その意味についての説明を業者は特にしていませんでした。
ところが、売買契約のあと買主が家を建てようと実測したところ、約5パーセントほど面積が小さいことが判明したため、買主が代金減額を求めたわけです。
これに対して裁判所は、本件は数量指示売買として買主の主張を認めました。理由としては、売買契約書に「公簿面積による」と記載されていても、買主は公簿イコール実測面積と理解していたこと、本件は50坪ほどの土地で5パーセントにちがいは無視できない差であることなどから、前記条項の記載では代金減額をしない趣旨とは言えないとしたのです。
以上からすると、売買契約書に「面積は公簿による」と記載しても、それだけでは代金減額を当然には否定できないので、代金減額もしない旨を付記することもケースによっては必要です。なお、これも判例ですが、面積が大きかったときの代金増額は当然にはできないとされています。