税務相談
月刊不動産2006年5月号掲載
土地の使用貸借(1)
代表社員 税理士 玉越 賢治(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
使用貸借という言葉を聞きますが、どのようなことですか。また、その税務上の取扱いを教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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賃貸借(民法601条)がその使用の対価(賃料)を支払うのに対し、使用貸借(民法593条)は無償による貸借取引です。
一般に、土地を貸借して借主がその土地上に建物を建築する場合、権利金を授受する、地代を支払う等、土地の使用対価の授受が行われます。
ただ、貸主(地主)と借主(借地人)との関係が、親子間、夫婦間等同族関係者の場合、その対価の授受がなく無償で貸借されている例が数多く見受けられます。この場合、借主は、本来ならば支払わなければならない権利金や地代の支払を免除されているという経済的利益を得ているということになります。相続税法では、この経済的利益に対して「対価を支払わないで又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合…利益を受けた時に…利益を受けた者が…利益額相当額を利益を受けさせた者から贈与により取得したものとみなす」(相続税法9条)として、贈与税の課税対象としています。
しかし、親子、夫婦等の関係者間における土地貸借では、このような特殊関係者間における土地の使用貸借の税務上の取扱いを別途定める必要が生じたわけです。1. 個人間の土地の使用貸借
昭和48年11月1日に俗称「使用貸借通達」が発遣されました。この通達は個人間の土地の使用貸借について定めたもので、貸主・借主どちらかが法人である場合には適用がありません。
(1) 使用貸借による土地の借受け
建物又は構築物(以下、「建物等」という。)の所有を目的として使用貸借による土地の借受けがあった場合、借地権慣行のある地域であっても、その土地の使用貸借に係る使用権の価額はゼロとして取り扱われます。
したがって、その使用貸借に係る土地は自用地又は貸家建付地(建物等が賃貸の場合)として評価されます。
この場合の使用貸借には、その土地の租税公課相当額以下の授受があるものを含み、地代の授受がなくても権利金等地代に代わるべき経済的利益の授受があるものは含まれません。
これにより、他人の土地に建物等を建築して使用貸借した場合、貸主・借主間に課税関係は生じません。また、土地建物等の所有者が建物等だけ又は土地だけを他人に贈与し、以後地代の支払がなかったとしても、建物等だけ又は土地だけの贈与として取り扱われ、貸主・借主間に借地権に係る課税関係は生じません。(2) 使用貸借による借地権の転借
借地権者からその借地権(に係る土地)を使用貸借により借り受けて建物等を建築した場合、又は借地権者から借地権に係る建物等を取得して、以後その借地権者からその敷地を使用貸借で借り受けることとなった場合には、借地権慣行のある地域であっても、その借地権の使用貸借に係る使用権の価額はゼロとして取り扱われます。
したがって、その使用借権が設定された借地権は、将来その借地権者に相続が発生した場合や、借地権者の変更があった場合、その借地権は自用のもの(自用借地権)であるとした場合の価額により、相続税・贈与税の課税対象となります。
これにより、借地権者が建物等のみを他人に贈与し、以後その他人から借地権者に地代の支払がなかった場合、又は借地権者が建物等を取り壊した後、その借地権者以外の者が建物等を建築して借地権者との間に地代の支払がなかった場合、であっても借地権者と借地権を使用貸借している者との間には、課税関係は生じません。
なお、この適用を受けようとする場合には、使用借地人、借地権者、土地所有者の3名が連署した「借地権の使用貸借に関する確認者」を所轄税務署あてに提出する必要があります。(3) 使用貸借に係る土地等を相続又は贈与により取得した場合
使用貸借に係る土地又は借地権を相続又は贈与により取得した場合、相続税又は贈与税の課税価格に算入すべき価額は、土地又は借地権が自用のものであるとした場合の価額とされます。
(次号につづく)