税務相談

月刊不動産2014年6月号掲載

区分所有の登記がされた二世帯住宅の敷地に係る相続税の小規模宅地特例

情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

被相続人の居住用家屋が被相続人と別生計の子により区分所有の登記がされた二世帯住宅である場合の相続税の小規模宅地特例の取扱いについて教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1.特定居住用宅地等に係る小規模宅地特例の概要

    相続開始直前において被相続人の居住用の宅地等が次の(1)または(2)の要件を満たす場合、「特定居住用宅地等」に係る小規模宅地特例の適用があり、相続税の課税価格の計算上、その宅地等のうち240㎡(平成27 年以降の相続または遺贈により取得した宅地等は330㎡)までの評価額の80%相当額が減額されます(租税特別措置法(以下措法)第69条の4第1項、第3項第2号イ)。

    (1)被相続人の配偶者が取得した宅地等

    (2)その宅地等を取得した被相続人の親族が、原則として相続開始直前にその宅地等の上に存する被相続人の居住用家屋に同居していた者であって、相続税の申告期限(相続開始後10 か月経過日)まで引き続きその宅地等を有し、かつ、その家屋に居住していること。

    2.区分所有の登記がされている二世帯住宅の敷地に係る小規模宅地特例の取扱い

    (1)被相続人の居住用の宅地等の範囲

    前述1.に規定する「被相続人の居住用の宅地等」とは、被相続人の居住の用に供されていた宅地等をいいます。被相続人とその親族が一棟の建物のなかで居住していた場合には、その親族が居住の用に供していた部分の敷地に対応する部分も、被相続人の居住の用に供されていた宅地等に含まれます。

    ただし、一棟の建物が「『建物の区分所有等に関する法律』第1条の規定に該当する建物」に該当する場合は、建物の敷地のうち、被相続人が居住の用に供していた部分に対応する部分のみが、被相続人の居住用の宅地等とされます(租税特別措置法施行令(措令)第40条の2第4項、措法通達69の4-7(注))。

    (2)被相続人の親族の同居要件

    前述1.(2)に規定する「被相続人の居住用家屋に同居していた者」という要件(以下「同居要件」といいます。)に該当する者とは、被相続人の親族のうち、相続開始直前において被相続人の居住用家屋で被相続人と共に起居していた人をいいます。具体的には被相続人の親族のうち、「相続開始の直前において、その宅地等の上の被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物のうち、『一定の部分』に居住していた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、その建物に居住している」ものが該当します(措法第69条の4第3項第2号イ)。

    この場合の『一定の部分』とは、次の①または②に掲げる区分に応じ、それぞれに定める部分となります(措令第40条の2第10項)。

    ①被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物が、『建物の区分所有等に関する法律』第1条の規定に該当する建物である場合には、当該被相続人の居住の用に供されていた部分が該当します。

    ②①以外の場合は、被相続人または当該被相続人の親族の居住の用に供されていた部分が該当します。

    (3)『建物の区分所有等に関する法律』第1条の規定に該当する建物の定義前述2.(2)と(3)における「『建物の区分所有等に関する法律』第1条の規定に該当する建物」とは、建物の独立した部分ごとに所有権の目的とすることができる建物を指します。ただし、構造上区分所有しうる建物が当然に区分所有建物に該当するわけではなく、区分所有の意思を表示する必要があると解されていることから、通常は区分所有建物である旨の登記がされている建物となります(措法通達69の4-7の3)。

    (4)事例による区分所有の登記がされた二世帯住宅の敷地に係る相続税の小規模宅地特例の適用の可否被相続人が所有する宅地の上に被相続人と別生計の長男が一棟の建物を所有し、1階は被相続人のみが居住し、2階は被相続人の長男夫婦が居住していた場合において、長男がその宅地を相続したとします。
    この場合に、その一棟の建物について被相続人が1階、長男が2階の専有部分につき区分所有権を登記しているときは、前述2.(1)より、長男が相続した宅地等のうち、被相続人が居住の用に供していた1階に対応する部分のみが、被相続人の居住用の宅地等とされます。長男は、その建物の1階に居住していなかったことから前述2.(2)の同居要件を満たすことができず、前述1.の特定居住用宅地等に係る小規模宅地特例の適用を受けることはできません。

page top
閉じる