法律相談

月刊不動産2003年6月号掲載

前回は土地の売買における瑕疵担保責任の内容について質問しました。

弁護士 草薙 一郎()


Q

前回は土地の売買における瑕疵担保責任の内容について質問しました。このなかで、瑕疵担保責任は瑕疵の存在を知ってから1年以内に請求をする必要があると教えられました。具体的には1年以内にどうすればいいのでしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 【Q】
     前回は土地の売買における瑕疵担保責任の内容について質問しました。
     このなかで、瑕疵担保責任は瑕疵の存在を知ってから1年以内に請求をする必要があると教えられました。
     具体的には1年以内にどうすればいいのでしょうか。

    【A】
     民法570条、同566条3項の1年という期間をどのような期間とみるかについては争いがあり、消滅時効の期間とする考え方と、除斥期間とする考え方とがあります。
     しかし、現在の判例の考え方は一般的には除斥期間と考えています。
     除斥期間というのは、権利を保全する期間と考えてもらえばいいのですが、この期間のなかで、その権利を行使する必要があり、消滅時効で認められている時効中断ということがありません。
     したがって、1年以内に権利行使をすることが必ず必要となります。
     そして、この権利行使は裁判上の請求、つまり訴訟提起のほか、裁判外での責任を求める意思を表明することでも構わないとされています。

    【Q】
     除斥期間の意味は分かりましたが、もし、買主が瑕疵の存在を売買契約後、何年も知らず、しばらくしてから知ったときでも、知ってから1年以内であれば瑕疵担保責任の追及が可能なのでしょうか。

    【A】
     このようなケースでの最高裁判所の判決がありますので紹介します。
     事案は土地建物を購入した者が、購入から21年以上経過して、その建物の改修をしようとしたところ、購入した土地の一部に購入時すでに道路位置指定がなされていて、建物の改修を大幅に縮小しなければいけなくなったというケースです。
     買主はそのことを知って直ちに売主に対して位置指定道路の解除をする措置をするか、それができないときは損害賠償を求める訴えを提訴しました。
     これに対して売主側は売買契約から、すでに21年以上経過しており、売買契約自体の損害賠償義務は10年の経過で時効になっている旨の反論をしました。
     これらに対して最高裁判所は、瑕疵担保責任の1年という期間は除斥期間であるが、このことから直ちに消滅時効の規定の適用が排除されると解することはできないとし、さらに、もし、消滅時効の適用が瑕疵担保責任のケースで適用がないとすると、買主が瑕疵に気付かない限り、買主の権利が永久に存続することになっておかしいと述べました。
     そして、瑕疵担保の損害賠償請求は、買主が売買の目的物の引渡しを受けたときから消滅時効は進行すると結論を下しました(平成13年11月27日判決)。
     以上のことから、瑕疵担保責任は瑕疵の存在を知ってからは1年以内の権利行使が必要であり、仮にその存在を知らなくても、売買の目的物の引渡しを受けてからは消滅時効が進行するので、原則として10年で責任追求はできなくなるということになります。

    【Q】
    最高裁判所の考え方は分かりましたが、ケースによっては瑕疵の存在を10年以内に知ることが困難ということも考えられますね。

    【A】
     そのとおりです。本件でも一般的に道路位置指定があることは一般人には知ることはできません。したがって、消滅時効の規定の適用に反対する学説もありますが、裁判所はこのようなときには、売主側の消滅時効だとの反論を権利の濫用として排斥すれば足りるとしています。本件でも仲介業者がいれば当然知り得た事項だったと思います。
     瑕疵担保責任の問題はいろいろな争点があるので、よく勉強してみて下さい。

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