税務相談

月刊不動産2005年9月号掲載

借地権の譲渡 II

代表社員 税理士 玉越 賢治(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

前回は、一般的な借地権の譲渡についての課税関係を教わりましたが、今回は特殊形態の借地権譲渡についての課税関係を教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 相当の地代を支払っている場合の土地譲渡と一時使用中の土地譲渡の場合についての課税関係を説明したいと思います。

    (1) 相当の地代を支払っている場合の土地譲渡
     既に説明してきたとおり、土地の価額に照らして相当の地代を収受しているときは、借地権の認定課税を受けることはありません。借地に際して相当の地代の授受があり、その後も相当の地代を地価にスライドして改定している場合には、借地権者に借地権価額が生じていることはなく、地主の所有する土地(底地)は更地と同額であると考えます。
     このため、この土地(底地)の譲渡は更地として譲渡されたものと同じであると考え、土地譲渡代金の全額が地主の土地譲渡価額となり、借地人の借地権譲渡価額はゼロとなります。
     無償返還届出書を提出している場合も、借地権者の借地権価額は生じていないとして、土地譲渡代金の全額が地主の土地譲渡価額となります。

    (2) 相当の地代を維持していない場合の土地譲渡
     土地の賃貸借に際して相当の地代を支払った場合であっても、その後、地価の上昇に伴い相当の地代を改定していないときは、相対的な地代率が低下し、借地人に自然発生借地権が生じていくと考えます。

    A 「通常の地代<実際地代<相当の地代」の場合
     支払地代=通常地代となる前に、土地譲渡が行われたときの借地権価額は、
     次のようになります。

     

     この場合における「相当の地代年額」とは、その土地の価額(又は自用地としての
     過去3年間の平均額)の年6%相当額です。

    B 「実際の地代≦通常地代」の場合
     この場合における借地権価額は、その土地について通常取引される借地権の価額
     です。
     通常取引される借地権価額が不明な場合には、簡便法として、土地の譲渡価額に
     相続税法における借地権割合を乗じて求めることが多いと考えます。

    (3) 一時使用中の土地譲渡
     土地の使用目的が単に物品置場、駐車場等として土地を更地のまま使用し、又は仮営業所、仮店舗等の簡易な建物の敷地、インドアゴルフ練習場やプレハブ車庫の敷地、工場構内の専属下請業者に対する工場構内の土地貸付け、労働組合に対する組合事務所等の敷地貸付けなど、その土地の使用が一時使用であると認められるときは、権利金の授受が行われないのが一般的です。
     借地借家法においても、臨時設備の設置その他一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合には、同法の保護規定は適用しないことにしています。
     ただ、このような一時使用の土地の立ち退きに際しても、撤去・運搬費用等の経費補填のために立退料の授受が行われることがあります。

    A 借地人の収受した立退料
    個人借地人の場合は、一時所得の収入金額、法人借地人の場合は益金に算入されます。

    B 貸主(地主)の支払った立退料
    借地人に支払った立退料は、個人の地主の場合は譲渡所得の譲渡経費、法人地主は損金に算入されます。

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