税務相談
月刊不動産2005年8月号掲載
借地権の譲渡 I
代表社員 税理士 玉越 賢治(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
借地権を譲渡した場合の課税関係を教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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借地権を譲渡した場合、次の算式で計算した譲渡益が課税対象となります。
譲渡対価-借地権設定時の支払権利金・借地権譲受時の取得価額-譲渡承諾料
借地権の譲渡に際しては、建物が同時に譲渡されることが一般的です。言い換えると、建物の譲渡に付随して借地権が譲渡されるといったほうが分かりやすいでしょう。
この借地権付建物の譲渡があった場合において、譲渡価額の総額を建物と借地権とにどのように按分するのかについては、下記のような考え方があります。A 譲渡価額総額を建物価額と借地権価額との比で按分する方法
B 譲渡価額総額から建物価額として相当な価額を差し引いて借地権の譲渡価額を求める方法
C 譲渡価額総額から借地権価額として相当な価額を差し引いて建物価額を求める方法1. 一般的な借地権の譲渡
(1) 個人借地人の借地権譲渡
個人借地人が借地権を譲渡した場合において、譲渡所得の計算上控除される取得費には、次のようなものが含まれます。
イ 土地賃貸借契約の締結・更新・更改に際して土地所有者等に支払った権利金、立退料、更新料等の金額
ロ 借地権付建物を取得した場合の借地権対価相当額(ただし、借地権価額が購入対価の10%以下の場合は、借地権の取得費に含めなくてもよい。)
ハ 借地に対する埋立・地盛り・地ならし・切土・防壁工事等の整地・改良工事費用、上下水道工事費用(ただし、構築物の取得価額とすることが相当なものについては、借地権の取得費に含めなくてもよい。)
ニ 建物の増改築に際して、土地所有者等に支払った承諾料
ホ 借地権付建物を取得後1年以内にその建物を取り壊した場合の建物の、建物取得価額+取壊し費用-廃材処分による収入金額
ヘ 借地権取得のために支払った仲介手数料
ト 法人から借地権の無償取得、低廉取得をした場合において、受贈益として課税されたときの借地権の価額と支払った金額との差額(受贈益金額)
チ 借地権取得のために借り入れた借入金利子のうち、借入日から借地権の使用開始日までの期間に対応する部分。借入れに際して負担した公正証書作成費用・抵当権設定登記費用・借入担保のために締結した保険料等借入れのために通常必要と認められる費用(事業所得や不動産所得の計算上必要経費に算入している部分を除く。)
リ みなし譲渡課税(本誌2005年2月号参照)が行われていた場合の借地権の時価
ヌ 譲渡した年の1月1日における所有期間が5年超の借地権を譲渡した場合には、借地権譲渡収入金額の5%相当額を取得費とすることができます。この場合には、イ~リの適用はありません。(2) 法人借地人の借地権譲渡
譲渡価額は益金算入され、借地権の帳簿価額は損金に算入されます。(3) 名義書換料
譲渡に際して支払われる名義書換料については、次のように取り扱われます。
イ 譲渡人が支払った場合
必要経費に算入されます。ロ 新しい借地人が支払った場合
借地権の取得価額に含まれます。ハ 土地所有者等が受け取った場合
貸主が受け取った名義書換料は、不動産所得の収入金額(個人)又は益金(法人)となります。2. 相当地代を支払っている場合の借地権の譲渡
次号参照。