税務相談
月刊不動産2007年10月号掲載
個人所有の賃貸アパートに係る所得税の取扱い
情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
個人が所有する賃貸アパートに係る所得税の取扱いについて教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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1. 不動産賃貸収入と所得税
個人が所有する賃貸アパートの家賃に係る取得は不動産所得とされ、所得税の課税対象となります。不動産所得の金額は、不動産賃貸に係る総収入金額からその収入を得るために必要とした経費の額を差し引いて計算します。
(1) 総収入金額
総収入金額には、受取家賃のほかに、名義書換料、承諾料等や共益費の名目で受け取るものや、敷金や保証金等のうち返還を要しないものが含まれます。
(2) 家賃等の収入計上時期
契約等により支払日が定められている場合は、その定められた支払日が収入計上時期となります。支払日が定められていない場合は、実際に支払を受けた日が収入計上時期となります。ただし、請求があったときに支払うべきと定められているものは、請求日となります。また、権利金や礼金は、貸付資産の引渡しを必要とするものは引渡日、引渡しを必要としないものについては、契約の効力発生日において収入に計上します。
なお、敷金や保証金のうち返還不要のものは、返還不要が確定した都度、収入に計上する必要があります。
(3) 必要経費
必要経費とは不動産収入を得るために必要な費用をいい、賃貸アパートの固定資産税、損害保険料、減価償却費や修繕費等が該当します。
2. 損益通算
(1) 損益通算とは
損益通算とは、2種類以上の所得があり、例えば、1つの所得が黒字、他の所得が赤字といった場合に、その所得の黒字と他の所得の赤字とを、一定の順序にしたがって、差引計算を行うというものです。
損益通算の対象となる所得は、不動産所得のほか、事業所得、譲渡所得と山林所得です。
(2) 損益通算の対象とならない不動産所得の赤字
不動産所得の金額の赤字のうち、次に揚げる損失の金額は、その損失が生じなかったものとみなされ、損益通算することができません。
① 別荘等の生活に通常必要でない資産の貸付けに係るもの
② 土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分の金額で一定のもの
③ 一定の組合契約に基づいて営まれる事業から生じたもので、その組合の特定組合員に係るもの
3. 不動産所得の赤字と土地を取得するための借入金の支払利子の関係
不動産所得の赤字のうち、土地を取得するための借入金の支払利子部分は、損益通算ができません。具体的には、次のような取扱いになります。
(1) 不動産所得の赤字が、土地等を取得するための借入金利子よりも多い場合
① 不動産所得の赤字のうち、土地の借入金利子に相当する金額は、損益通算の対象となりません。
② 土地の借入金利子以外の赤字は、損益通算の対象となります。
(2) 不動産所得の赤字が、土地等を取得するための借入金利子よりも少ない場合
不動産所得の赤字はすべて切り捨てられ、損益通算ができません。この場合、建物の取得に係る借入金利子は損益通算ができます。土地と建物を一部自己資金、残りを借入金により取得した場合は、借入金で得た資金は、まず建物の取得に充てたと考えます。
4. 譲渡所得との損益通算
(1) 株式等に係る譲渡所得等の金額と不動産所得の損益通算
不動産所得の赤字は、株式等の譲渡による所得の黒字と損益通算できません。同様に、株式等の譲渡による譲渡所得等の金額に赤字がある場合は、不動産所得の黒字とは損益通算できません。
(2) 土地建物等に係る譲渡所得等の金額と不動産所得の損益通算
不動産所得の赤字は、土地建物等の譲渡所得の黒字や株式等の譲渡による譲渡所得等の黒字と損益通算できません。同様に、株式等の譲渡による譲渡所得等の赤字と、不動産所得の黒字とは損益通算できません。