税務相談
月刊不動産2011年10月号掲載
個人が賃貸併用住宅を取得した場合の不動産取得税
情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
個人が賃貸併用住宅を取得した場合の不動産取得税の取扱いについて教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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1.不動産取得税の計算方法
不動産取得税は、建物や土地を取得した者に対し不動産の所在する都道府県が課税する税金です。
不動産取得税は、課税標準に税率(4%)を掛けて計算します。課税標準は、原則として建物と土地の取得時の固定資産税評価額です。ただし、平成24年3月31日までに宅地を取得した場合、固定資産税評価額の2分の1相当額が課税標準となります。また、平成24年3月31日までに取得した住宅やその敷地である土地に係る税率は、特例的に3%とされています。
2.住宅を取得した場合の課税標準の特例
(1)新築住宅の場合
床面積が50㎡以上240㎡以下の新築住宅については、一戸につき1,200万円が課税標準から控除されます。
(2)中古住宅の場合
個人が自己の居住目的で一定の中古住宅を取得した場合において、次の①と②のすべての要件に該当するときは、③の金額が課税標準から控除されます。
①床面積が50㎡以上240㎡以下のもの
②新築後25年以内(非木造の建物の場合)であること等、一定の要件を満たすものであること
③控除額
平成9年4月1日以降に新築の住宅は1,200万円、平成9年3月31日以前に新築の住宅は新築の時期に応じて1,000万円から350万円までの金額が、建物の課税標準から控除されます。
3.住宅用地等の取得に係る税額の減額(住宅減額)特例
(1)適用要件
次のいずれかの要件に該当し、かつ、その土地上の住宅が上記2.の要件に該当する場合、この特例が適用されます。
①土地取得後、原則として3年以内にその土地上に住宅が新築されたこと
②土地取得者が土地の取得日から原則として3年以内に、その土地上に住宅を新築したこと
③借地して住宅を新築した者が新築後1年以内に、その敷地を取得したこと
④新築未使用の住宅及びその敷地を、その住宅の新築後1年以内に取得したこと
⑤土地取得者が土地の取得日から1年以内に、その土地上にある中古住宅を取得したこと。
⑥借地して中古住宅を取得した者がその住宅の取得後1年以内にその敷地を取得した場合、土地を取得後3年以内にその土地上に住宅が新築されたこと。
(2)減額される額
次の①又は②のいずれか高い額が税額から減額できます。
①4万5,000円
②1㎡当たり土地の課税標準額×住宅の床面積の2倍(200㎡が限度)×3%
4.賃貸併用住宅を取得した場合の不動産取得税の取扱い
(1)住宅を取得した場合の課税標準の特例の適用
住宅を取得した場合、住宅1戸につき前述2.(2)③の控除額が課税標準(固定資産税評価額)から控除できますが、賃貸併用住宅における取扱いについては地方税法では詳細に規定されておらず、実務上は不動産の所在地の都道府県に取扱いを確認する必要があります。
賃貸併用住宅に係る課税標準の特例について、東京都では「住宅部分に係る課税標準からのみ控除することができ、賃貸部分に係る課税標準から控除することはできない」としています(平成18年3月東京都主税局発行「不動産取得税質疑応答集」)。
(2)住宅減額特例の適用
前述3.の住宅減額特例の適用対象となるのは前述2.の住宅の敷地部分のみです。この住宅の敷地部分の範囲について地方税法では詳細に規定されておらず、実務上は不動産の所在地の都道府県に取扱いを確認する必要があります。
東京都の場合、住宅の敷地部分を「溝や塀などの状況によって住宅の用に供されていると認められる部分の土地」と定義し、「一筆の土地上に住宅と貸家が塀を隔てて別棟として建っている場合には、その土地のうち住宅の敷地に対応する部分のみが住宅減額の対象になる」としています(前掲「不動産取得税質疑応答集」)。
賃貸併用住宅の敷地に係る住宅減額の特例について、東京都では「その住宅が1棟の建物としての形態を有している限り、その敷地全体を住宅減額特例の対象とし、床面積等により住宅部分と賃貸部分に分ける必要はない」としています(前掲「不動産取得税質疑応答集」)。