税務相談

月刊不動産2010年10月号掲載

個人が不動産賃貸業を始めた場合の税務署への届出

情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

個人が不動産賃貸業を開始した際に、税務署へ届け出る書類とその提出期限について教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1.所得税

    (1) 個人事業の開廃業等届出書

     個人事業を開始した場合は、事業開始等の日から1か月以内に個人事業の開廃業等届出書を提出する必要があります。

    (2) 所得税の青色申告承認申請書

    ①原則

     青色申告承認申請書は、青色申告書による申告をしようとする年の3月15日までに所轄税務署長に提出する必要があります。ただし、その年の1月16日以後、新たに不動産の賃貸を開始した場合は、事業開始日から2か月以内に提出する必要があります。

    ②相続により、被相続人の事業を承継した場合

     相続により相続人が被相続人の事業を承継した場合は、青色申告承認申請書の提出期限は、相続開始を知った日から4か月以内とされます。ただし、その年の9月1日以降に死亡した場合の提出期限は、次のようになります。

    ・死亡日が9月1日から10月31日までの場合は、その年の12月31日までが期限となります。

    ・死亡日が11月1日から12月31日までの場合は、その年の翌年2月15日までが期限となります。

    ③承認されたものとみなされる場合

     ①の青色申告承認申請につき、青色申告の承認を受けようとする年の12月31日(その年の11月1日以降に新たに業務を開始した場合は、その年の翌年の2月15日)までに税務署長から処分の通知がなかったときは、承認されたものとみなされます。

    (3) 青色事業専従者給与に関する届出書

     事業的規模で不動産賃貸を開始した人が青色事業専従者給与額を必要経費に算入する場合は、必要経費に算入しようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後開業した場合や新たに事業専従者を有することとなった場合は、その日から2か月以内) に青色事業専従者給与に関する届出書を提出する必要があります。

    (4) 減価償却資産の償却方法の届出書

     建物以外の減価償却資産について定率法による償却を選択する場合は、事業開始日の属する年分の確定申告期限までに、減価償却資産の償却方法の届出書を提出する必要があります。

    (5) 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

     給与の支給人員が常時10人未満である給与等の支払者が、給与等から源泉徴収した所得税の納期について年2回にまとめて納付するという特例の適用を受ける場合は、いつでもその特例の承認に関する申請書を提出することができます。なお、その申請書を提出した月の翌月末までに税務署からの通知がなければ、申請の翌々月の納付分からこの特例が適用されます。

    2.消費税

    (1) 消費税課税事業者選択届出書

     事業開始日の属する課税期間等において免税事業者が課税事業者になることを選択する場合は、その適用を受けようとする課税期間中に、消費税課税事業者選択届出書を提出する必要があります。

    (2) 消費税課税期間特例選択届出書

     事業開始日の属する課税期間等において課税期間の短縮を選択する場合は、その適用を受けようとする課税期間中に、消費税課税期間特例選択届出書を提出する必要があります。

    (3) 消費税簡易課税制度選択届出書

     事業開始日の属する課税期間等において簡易課税制度を選択する場合は、その適用を受けようとする課税期間中に、消費税簡易課税制度選択届出書を提出する必要があります。

    (4) 相続により被相続人の事業を承継した相続人の消費税の届出

     被相続人が提出した課税事業者選択届出書や簡易課税制度選択届出書の効力は、相続により事業を承継した相続人には及びません。したがって、相続により事業を承継した相続人が相続開始日の属する課税期間から課税事業者を選択するときや、相続開始日の属する課税期間から簡易課税制度を選択するときは、原則として相続開始日の属する課税期間の末日までに、消費税課税事業者選択届出書や消費税簡易課税制度選択届出書を提出する必要があります。

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