税務相談

月刊不動産2009年1月号掲載

個人が不動産を収用された場合の譲渡所得の特例について

情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

個人が所有不動産を収用された場合の譲渡所得の特例について教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  •  土地収用法等に基づき、個人が不動産を収用等された場合には、譲渡所得の計算上、次の1.又は2.のいずれかの特例の適用を受けることができます。

    1.収用等に伴い代替資産を取得した場合の特例

    (1) 特例の概要

     この特例は、収用等より取得した対価補償金等で他の不動産に買換えをした場合に適用があります。

     特例の特例を受ける場合、対価補償金等(譲渡金額)より買換不動産の取得価額が大きいときは、課税が繰り延べられ、譲渡所得はなかったものとされます。一方、譲渡金額より買換不動産の取得価額が小さいときは、
    その差額を収入金額として譲渡所得を計算します。

    (2) 適用要件

     この特例の適用を受けるためには、次の3つの要件のすべてに該当することが必要です。

     ①収用等された不動産が固定資産であること。なお、販売用不動産は棚卸資産なので、対象外となります。

     ②買い換えた不動産が、次のいずれかに該当すること。

     イ. 収用等された資産が次に掲げる資産である場合、各資産の区分に応じて取得した資産であること。
     ・土地又は土地の上に存する権利(借地権など)
     ・建物又は建物附属設備その他の構築物
     ・上記以外の構築物・その他の資産

     ロ. 居住用の土地建物など収用等された不動産が異なる2以上の資産で、一の効用を有する一組の資産である場合には、同じ効用を有する資産であること。この場合の一組の資産に該当するのは、次の用途に限られます。
     ・居住の用
     ・店舗又は事務所の用
     ・工場、発電所又は変電所の用
     ・倉庫の用
     ・劇場の用、運動場の用、遊技場の用その他の用

     ハ. 収用等された不動産が個人の事業用資産である場合は、その個人の事業用土地等又は減価償却資産に該当すること。
     ③原則として、不動産の収用等のあった日から2年以内に、買換えの資産を取得すること。

    (3) 申告手続
     この特例の適用を受けようとする場合には、収用等の年分の確定申告書に一定の事項を記載し、かつ収用証明書その他の書類を添付する必要があります。

    (4) 更正の請求と修正申告
     収用等の年の翌年以後に代替資産を取得する予定で課税の繰延べの特例の適用を受けた後、収用等に伴う対価補償金等で取得した代替資産の取得価額が、取得価額の見積額と異なる場合や、代替資産を取得しなかった場合には、収用等のあった年分の所得税について、更正の請求又は修正申告を行います。

     なお、修正申告書が上記の提出期間内に提出された場合には、その修正申告書は、期限内申告書とみなされますので、過少申告加算税は賦課されません。また、その期間内に納税した場合は、延滞税も課されません。

    2.5,000万円特別控除

    (1) 特例の概要
     個人が収用等により不動産を譲渡し、対価補償金等を取得した場合は、譲渡所得の計算上、最高5,000万円の特別控除を差し引くことができます。

    (2) 適用要件
     この特例を受けるには、次の4つの要件のすべてに当てはまることが必要です。

     ①譲渡した不動産は固定資産であること。

     ②その年に公共事業のために譲渡した不動産の全部について、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例を受けていないこと。

     ③買取り等の申出があった日から6ヶ月を経過した日までに不動産を譲渡していること。

     ④公共事業の施行者から最初に買取り等の申出を受けた者が譲渡していること。

    (3) 申告手続
     この特例の適用を受けようとする場合は、収用等の年分の確定申告書に、買取り等の申出証明書その他一定の書類を添付することが必要です。

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