税務相談
月刊不動産2006年7月号掲載
使用貸借に係る土地を譲渡した場合
代表社員 税理士 玉越 賢治(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
使用貸借に係る土地を譲渡した場合、譲渡収入金額はどのように按分すればよいのでしょうか。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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「使用貸借通達」は昭和48年11月1日に発遣されました。したがって、その施行前から使用貸借が行われていた場合と、その施行後に使用貸借が行われていた場合とでは、譲渡収入金額を按分する場合の取扱いが違います。
(1) 使用貸借通達の施行後に使用貸借が行われた土地を譲渡した場合(5月号(1)のケース)
使用貸借通達の施行後に使用貸借による土地の貸借があった場合、その土地の使用貸借に係る使用権の価額はゼロとして取り扱われます。5月号(1)で説明したとおりです。
したがって、その土地を譲渡した場合の土地の譲渡収入金額は、全額地主である土地の所有者の収入となります。(2) 使用貸借通達の施行前から使用貸借が行われていた土地を譲渡した場合
借地権相当額について贈与税の課税を受けていた場合は、その土地に係る借地権相当額は使用借権者に帰属していると考えられることから、その土地の譲渡収入金額は、地主と使用借権者とで、合理的に按分します。具体的には、相続税路線価図における借地権割合で按分すればよいでしょう。
それ以外の場合、すなわち、借地権相当額について贈与税の課税を受けていなかった場合は、(1)と同様に、譲渡収入金額は、全額土地所有者の収入となります。(3) 使用貸借通達の施行前から使用貸借が行われていた土地について、使用貸借通達の施行後に借地権部分又は底地部分に相続又は贈与が発生している場合(5月号(3)又は6月号(4)のケース)
その土地の譲渡収入金額は、地主と使用借権者とで、合理的に按分します。具体的には、相続税路線価図における借地権割合で按分すればよいでしょう。
これは、その土地の貸借に係る借地権相当額について、贈与税課税が行われていたかどうかにかかわりはありません。(4) 借地権者以外の者が底地を取得し、借地権者との間で使用貸借が行われていた場合(6月号(5)のケース)
(a) 使用貸借通達の施行後に底地を借地権者以外の者が取得している場合、原則として土地の譲渡収入金額は、全額土地所有者の収入となります。ただし、その底地取得に際し、(ア)「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」を提出したことにより、贈与税課税が行われていなかったときは、その土地の譲渡収入金額を底地部分の金額と借地権部分の金額とに按分して、それぞれが譲渡したものとして申告することになります。具体的には、(イ)相続税路線価図における借地権割合で按分すればよいでしょう。(b) 使用貸借通達の施行前に底地を借地権者以外の者が取得している場合で、その取得者に対して借地権の譲与課税(受贈益課税)が行われていなかったときは、(ア)その土地の譲渡収入金額を底地部分の金額と借地権部分の金額とに按分して、それぞれが譲渡したものとして申告することになります。具体的には、(イ)相続税路線価図における借地権割合で按分すればよいでしょう。
(c) 上記(b)の場合で、底地取得者に対して借地権部分に係る贈与税課税が行われていたことが明らかなときは、土地の譲渡収入金額は、全額土地所有者の収入となります。
(5) 借地権付建物を土地所有者以外の者が取得し、土地所有者との間で使用貸借が行われていた場合(6月号(6)のケース)
(a) 使用貸借通達の施行後に借地権付建物を土地所有者以外の者が取得している場合、その借地権付建物取得に際し(4)(a)の(ア)(イ)と同じ方法で行います。(b) 使用貸借通達の施行前に借地権付建物を土地所有者以外の者が取得している場合で、その際に土地所有者に対して借地権の譲与課税(受贈益課税)が行われていなかったときは、(4)(b)の(ア)(イ)と同じ方法で行います。
(c) 上記(b)の場合で、土地所有者に対して借地権部分に係る贈与税課税が行われていたことが明らかなときは、土地の譲渡収入金額は、全額土地所有者の収入となります。