税務相談
月刊不動産2009年8月号掲載
住宅取得等のための時限的な贈与税の軽減制度
情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
住宅取得等のための時限的な贈与税の軽減制度について教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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1.制度概要
需要不足に対処する観点から、平成21年から22年末までの2年間に限り、直系尊属から住宅用家屋の取得等に充てるために金銭の贈与を受けた場合には、500万円まで贈与税が非課税とされます。
2.制度のポイント
(1) 対象となる贈与者の範囲
住宅取得資金等の贈与に係る相続時精算課税制度の特例(最高3,500万円特別控除)は、父母からの贈与だけが対象ですが、この特例は「直系尊属」からの贈与が対象とされています。したがって、祖父母からの贈与についても対象となります。
(2) 対象となる受贈者の範囲
贈与を受ける年の1月1日現在で20歳以上の個人が対象となります。
(3) 対象住宅
対象住宅の要件は、住宅取得資金等の贈与に係る相続時精算課税制度の特例制度の要件を踏襲し、次のとおりに定められています。
① 家屋の登記簿上の床面積(区分所有の場合は区分所有する部分の床面積)が50㎡以上であること。
② 中古住宅の場合は次の要件を満たすこと。
イ. マンション等の耐火建築物は、その取得日以前25年以内に建築されたものであること。
ロ. 耐火建築物以外の建物は、その取得日以前20年以内に建築されものであること(ただし一定の耐震基準を満たすものを除く)。
③ 床面積の2分の1以上に相当する部分が、居住専用であること。
(4) 対象となる住宅の取得等
① 住宅の取得とは、自ら居住する主たる一定の住宅用家屋の新築や取得をいい、その住宅用家屋の取得と同時に行う敷地の取得を含む。
② 増改築は、次の要件を満たすこと。
イ.工事費用の額が100万円以上であること。
ロ. 居住用部分の工事費が全体の工事費の2分の1以上であること。
ハ. 増改築等後の家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が、居住専用であること。
ニ. 増改築等後の家屋の床面積(区分所有の場合は区分所有部分の床面積)が50㎡以上であること。
(5) 居住要件
原則として、住宅取得資金を取得した年の翌年3月15日までに、(3)の住宅用家屋を取得等又は増改築等をして、居住すること又は居住することが確実であると見込まれることが要件とされます。
(6) 非課税金額
贈与税が非課税になるのは、贈与を受ける人ごとに平成21年から22年までの2年間で500万円までとなります。
(7) 既存の基礎控除・特別控除との関係
この特例は、暦年課税制度の基礎控除や相続時精算課税制度の特別控除と合わせて適用できます。
したがって、父母から住宅取得資金の贈与を受ける場合、暦年課税制度では、基礎控除110万円に500万円を加えた金額である610万円まで、相続時精算課税制度を選択すると、特別控除3,500万円に500万円を加えた4,000万円まで、贈与税負担なしに贈与を行うことができます。
3.贈与者死亡時の相続税の取扱い
贈与者が死亡した場合において、贈与者より財産を相続する相続人が、生前に贈与者から贈与により取得した財産が、贈与者の相続税の課税対象とされるケースがあります。具体的には、暦年課税制度の贈与税については贈与者の相続開始前3年以内の贈与、相続時精算課税制度の選択後は父母からの贈与を受けたすべての財産は、原則として父母の相続税の課税対象とされます。
しかし、この特例の適用を受けた住宅取得資金のうち、500万円の非課税枠までの金額については、贈与者の相続税の課税対象とはなりません。
4.申告要件
この特例の適用を受けるためには、贈与税の期限内申告書にこの特例を受ける旨を記載するとともに、計算の明細書、住民票の写し、登記事項証明書など一定の書類を添付する必要があります。