税務相談

月刊不動産2019年2月号掲載

住宅以外の建物の家賃に係る消費税率の引上げの経過措置

税理士 山崎 信義(税理士法人タクトコンサルティング)


Q

2019年10月1日に予定される、住宅以外の建物の家賃に係る消費税率の引上げの経過措置について教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 住宅以外の建物の家賃に適用される消費税(地方消費税を含む。以下同じ)率は、原則として2019年10月1日以後の家賃については10%になります。しかし、下記2.の要件を満たす場合には、2019年10月1日以後の住宅以外の建物の家賃についても、8%税率が適用されることとなります。

  • 1.住宅以外の建物の家賃に係る消費税の適用税率の原則

    建物(住宅を除く。以下同じ)の家賃のうち、2019年10月1日以後の貸付けに係るものについては、後述2.の経過措置が適用される場合を除き、原則として10%税率が適用されます。
     例えば、当月分(1日から末日まで)の支払期日を前月25日とする建物の賃貸借契約において、2019年10月分の家賃を2019年9月中に受領した場合でも、2019年10月分の資産の貸付けの対価であることから、後述2.の経過措置の適用がある場合を除き、その家賃については10%税率が適用されます。
     これに対し、当月分の家賃の支払期日を翌月10日とする賃貸借契約において、2019年9月分の家賃を2019年10月に受領した場合、2019年9月分の資産の貸付けの対価であることから、支払期日が2019年10月1日以後となるときであっても、その家賃については8%税率が適用されます(改正法附則15条、国税庁「平成31年(2019年)10月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関
    する経過措置の取扱いQ&A【具体的事例編】」(以下「Q&A」)問4)。

  • 2.資産の貸付けに係る適用税率の経過措置

     2013年10月1日から2019年3月31日までの間に締結した資産の貸付けに係る契約に基づき、2019年10月1日前から2019年10月1日以後にかけて引き続きその契約に係る資産の貸付けを行っている場合において、その契約の内容が次の(1)または(2)の要件に該当するときは、前述1.にかかわらず、2019年10月1日以後に支払いを受けるべき賃貸料(家賃)に係る消費税は、引上げ前の8%税率が適用されます(改正法附則5条4項、16条等)。

    (1)その契約に係る資産の貸付けの期間およびその期間中の賃貸料が定められており、かつ、事業者が事情の変更その他の理由により、その家賃の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと。
    (2)その契約に係る資産の貸付けの期間およびその期間中の賃貸料の額が定められており、かつ、その契約期間中に当事者の一方または双方がいつでも解約の申入れをすることができる旨の定めがないこと等の要件に該当すること。

  • 3.経過措置の適用を受けた旨の通知

     事業者が2.の経過措置の適用を受ける資産の貸付けを行った場合は、賃借人にその経過措置の適用を受ける旨を書面で通知します(改正法附則5条8項、16条2項)

  • 4.経過措置に関する留意点

    (1)賃貸借契約に自動継続条項がある場合(Q&A問27)
     例えば、2013年10月1日から2019年3月31日までの間に建物の賃貸借契約を締結し、その契約の内容が、①貸付期間は2019年10月1日を含む2年間、②契約締結から2年ごとに自動継続するものである場合、①と②以外の契約の内容が前述2.の要件に該当するときは、2019年10月1日以後に行うその建物の貸付けについて、2.の経過措置により、8%税率が適用されます。ただし、自動継続条項があるとしても契約における当初の貸付期間は2年間となるため、その2年間のうち2019年10月1日以後に行われる貸付けのみが、2.の経過措置の対象となります。

    (2)賃貸借契約に「消費税率改定に伴い家賃を変更する」旨の定めがある場

     建物の賃貸借契約において、「消費税率の改正があったときは、改正後の税率
    による」旨の定めがある場合には、その定めは前述2(. 1)の「事業者が事情の変更その他の理由によりその対価の額の変更を求めることができる旨の定め」に該当しないものとして取り扱われる(「平成31年10月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いについて(法令解釈通達)」17)ことから、2. (1)の要件を満たします。

     したがって、建物の賃貸借契約上「消費税率の改正があったときは、改正後の税率による」旨の定めがあったとしても、その契約の内容が前述2.の他の要件を満たす場合には経過措置の対象とされ、引上げ前の8%税率が適用されます(改正法附則5条4項ただし書、16条1項、Q&A問31)。

    (注)改正法:社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(平成24年法律第68号)

     

今回のポイント

●前述2.の経過措置について、2019年4月1日以後にその資産の貸付けに係る対価の額が変更された場合は、変更後の資産の貸付けに係る対価の額が全て経過措置の対象外となり、2019年10月1日以後分の賃貸に係る消費税は10%税率が適用されます(改正法附則5条4項ただし書)。
●上記4(. 1)の自動継続条項のある建物の賃貸借契約において、解約するときは一定の期日(以下「解約申出期限」)までに申し出る旨の定めがある場合には、解約申出期限を経過したときに貸主と借主の間で新たな契約の締結があったものと考えます。よって、2013年10月1日から2019年3月31日までに解約申出期限が経過して自動継続された契約に基づき、2019年10月1日前から2019年10月1日以後にかけて引き続き貸付けを行う場合、2019年10月1日以後行われる貸付けについては、前述2.の経過措置が適用されます。

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