税務相談
月刊不動産2003年12月号掲載
会社支援のための会社オーナーによる土地贈与
代表社員 税理士 玉越 賢治(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
会社オーナーが会社支援のために不動産を会社に贈与することがあります。会社支援額をより多くするためには売却のほうがいいとも聞きます。税法上の考え方を教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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オーナー会社の場合、オーナーが会社に対して資金を提供(貸付け)したり、増資に応じたりして、会社を支えていきます。オーナーの資金提供が枯渇した場合には、オーナー自身の不動産を売却して資金化し、その資金を会社に注ぎ込むことが考えられます。
しかし、会社支援のためにオーナー固有の不動産を売却して資金化しても、その売却益に対して税金が課されては、せっかくの自助努力もその税金で減殺されてしまいます。
まず、オーナーが会社に不動産(土地・建物)を贈与し、会社がその不動産を売却した場合はどうなるでしょうか。
会社は、不動産の贈与による利益(不動産受贈益)は繰越欠損金と相殺され法人税の課税所得は発生しません。しかし、会社オーナーは、不動産を時価で売却したとみなされて、譲渡所得税を負担しなければなりません。
所得税法での譲渡所得は、その対価として受け取る売却代金等を基に計算するのが原則です。この原則から言えば、贈与は対価がありません。収入金額がゼロですので所得もゼロとなり譲渡税は発生しません。
しかし、この「収入に対して課税する」という原則に対して特例規定があります。この特例は、みなし譲渡と呼ばれ、次の内容です。
不動産等の移転で譲渡所得の起因となる次の移転があった場合には、時価で譲渡したものとみなすという規定です。(贈与等の場合の譲渡所得等の特例:所得税法第59条)(1)法人に対する贈与・遺贈
(2)法人に対する低額譲渡(時価の50%未満での売買)
時価50%未満での売買で譲渡損となる場合は、この損は無かったものとされ、損益通算が出来ないことになります。
(3)限定承認による相続・遺贈
以上のみなし譲渡の特例から、法人への土地の贈与は、贈与者が土地を時価で売却したものとみなされます。会社支援額をより多くするためには、会社オーナーは、不動産を時価の50%以上で会社に売却して、会社がその不動産を第三者に売却したほうがよいでしょう。
法人に対する売却額が、時価の50%以上ならば、みなし譲渡特例が適用されませんので、実際の売却額で売主(会社オーナー)の譲渡税を計算することになります。(図)
次に、土地・建物の贈与に代えて、会社に借地権を設定させてはどうでしょう。
会社支援のために、会社に対して建物は贈与しますが、土地は贈与しないということにして、建物贈与後に貸主個人・借主法人間で土地賃貸借契約書を締結します。個人所有の賃貸物件を会社に贈与することで、会社財産の増加と収益向上を考えています。
借地権の無償設定は、みなし譲渡に該当して譲渡したオーナーに譲渡税の課税はあるのでしょうか。
借地権の無償設定は、みなし譲渡の要件にある譲渡所得の基因となる財産の移転には該当しませんので、みなし譲渡の適用はありません。したがって、会社オーナーに所得税・住民税の課税はありません。
みなし譲渡の要件は、「譲渡所得の起因となる資産の移転」です。借地権の設定に伴う対価として権利金等を土地時価の50%超を受領すれば、譲渡所得として課税されることとなりますが、50%未満の権利金等では譲渡所得に該当しません。したがって、借地権の無償設定は譲渡所得には該当しないので、みなし譲渡の適用はありません。