税務相談
月刊不動産2004年9月号掲載
会社分割を使った不動産の譲渡
代表社員 税理士 玉越 賢治(税理士法人 タクトコンサルティング)
Q
会社分割という制度を使うと、税支出を抑えながら不動産を移転することができると聞きましたが、その制度の概要と税務メリットを教えてください。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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平成13年4月1日施行の改正商法により、会社分割制度が認められるようになりました。会社分割とは、会社の営業の一部もしくは全部を切り取って、新しく会社を作ったり、既存の会社とくっつけたりすることができる制度です。
新たに設立する会社に分割する会社の営業を承継させるものを「新設分割」といい、既存の他の会社に分割する会社の営業を承継させるものを「吸収分割」といいます。
商法では、分割する会社を「分割会社」といい、営業の承継を受ける会社を「設立会社」(新設分割)又は「承継会社」(吸収分割)といいますが、法人税法では、前者を「分割法人」、後者を「分割承継法人」といいます。
会社分割により、営業の承継を受ける会社はその営業の対価として株式を発行しますが、その株式を分割する会社に割り当てる場合を分社型分割(物的分割)といい、分割する会社の株主に割り当てる場合を分割型分割(人的分割)といいます。新設分割、吸収分割それぞれに分社型分割、分割型分割が認められています。(会社分割の類型)
法人税法では、法人が組織再編成によりその有する資産等を移転した場合には、原則として移転資産の譲渡があったものとして、譲渡損益の計上を求めています。すなわち、法人が分割により分割承継法人にその資産及び負債を移転したときは、その移転した資産・負債は移転時の時価によって譲渡したものとして譲渡損益の計算が行われます。
しかし、これでは含み益のある会社は、税金を支払ってまでして会社分割しようとはしません。このため、法人税法では、その資産等の移転が形式のみで実質的には保有が継続しているといえる一定要件を満たしているものについては、その資産等の譲渡損益の計上を繰り延べることとしています。これを適格分割といいます。
資産等の譲渡損益が繰り延べられる場合は、企業グループ内の会社分割と共同事業を営むための会社分割に分けられ、前者はさらに、100%の持分関係にある法人間で行う会社分割と、50%超100%未満の持分関係にある法人間で行う会社分割に分けられます。それぞれ一定要件を満たす場合に適格会社分割として譲渡損益に対する課税繰延べが認められます。
法人が所有する不動産を移転した場合、その譲渡益に対する法人税課税の有無だけではなく、それ以外の取得税等についても考慮しておく必要があります。
会社分割制度を使った場合の登録免許税は5分の1に、不動産取得税はゼロに抑えることができるため、不動産を移転するにあたって会社分割制度を使うことを検討してみてはいかがでしょう。(売買と会社分割との不動産移転に係る諸税負担比較)