税務相談

月刊不動産2014年11月号掲載

二世帯住宅の敷地に対する固定資産税の住宅用地に係る課税標準の特例の適用

情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

二世帯住宅の敷地に対する固定資産税の住宅用地に係る課税標準の特例の適用について教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1.住宅の敷地に係る固定資産税のポイント

    (1)固定資産税の計算方法

    土地の固定資産税は、賦課期日(1月1日)に不動産を所有している者に対し、所在地の市町村が課税する税金です。固定資産税は、課税標準に税率を掛けて計算します。税率(標準税率)は1.4%です。土地の固定資産税の課税標準は、地方税法349条に定める価格(いわゆる「固定資産税評価額」)を基に計算します。

    (2)住宅用地である土地の課税標準の特例

    専ら人の居住の用に供する家屋の敷地のうち、その上にある家屋の総床面積の10倍までの土地は住宅用地とされ、その固定資産税の課税標準には、地方税法349条の3の2により、次の減額特例が設けられています。

    ①住宅用地で住宅1戸につき200㎡までの部分は、固定資産税評価額の6分の1相当額を課税標準とします。

    ②住宅用地のうち200㎡を超える部分は、固定資産税評価額の3分の1相当額を課税標準とします。

    2.二世帯住宅の敷地における住宅用地に係る固定資産税の課税標準の特例の適用

    (1)二世帯住宅の敷地に係る特例適用のポイント

    地価が高い都市部では、親の土地の上に二世帯住宅を建て、親と子のそれぞれの家族が住む場合があります。この二世帯住宅については、内部で各世帯の居住スペースがつながっているタイプと、プライバシー尊重のため、親子世帯の居住スペースを独立させ、内部では互いのスペースへの行き来ができないものがあります。

    二世帯住宅の敷地は基本的に住宅用地に該当することから、前述のA1(2)の特例(以下「住宅用地特例」といいます)の適用対象となります。ただし、住宅用地特例は、A1(2)の通り住宅1戸当たりの敷地面積により課税標準とされる額が異なることから、居住する二世帯住宅の戸数により、その敷地に係る固定資産税の額が異なります。

    (2)東京都の裁決事例から見た住宅用地特例の適用

    二世帯住宅のうち、内部で各世帯の居住スペースがつながっているタイプの敷地に係る住宅用地特例の適用について、その適用の可否を巡り東京都の不服審査請求で争われた事例があり(平成26年2月5日東京都裁決)、実務の参考になります。以下、その概要を紹介します。

    争点となったのは、住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例を適用する場合の住戸の戸数をどのように認定するかということでした。この二世帯住宅(以下、「本件住宅」といいます)は、平成15年に新築した内部で各世帯の居住スペースがつながっているタイプのもので、その敷地の面積は約210㎡でした。裁決書によると新築当時、所轄都税事務所の調査を受け、敷地全体について住宅用地特例の適用を受け、課税標準を固定資産税評価額の6分の1として固定資産税が計算されていました。

    ところが、都税事務所は平成25年7月になり、あらためて本件住宅について現地調査を行い、住宅各階に玄関、キッチン、トイレなどが設置されているものの、内部で行き来ができるタイプの二世帯住宅であることを確認しました。さらに同事務所は「固定資産税・都市計画税についてのおたずね」という文書で納税者に住戸数を照会し、その回答等をもとに本件住宅の住戸数を最終的に全体で1戸と認定しました。この認定をもとに、敷地面積200㎡を超える部分について固定資産税の課税標準を6分の1から3分の1に修正する決定をし、過去5年の未納分を追徴したことから、納税者とのトラブルに発展したものです。

    納税者からの不服申立てを受けて審査した東京都は、「住宅用地のうち、住戸1戸当たり200㎡までの部分に対して課する固定資産税の課税標準は、固定資産税評価額の6分の1の額とすることとされており、この場合の住戸の数については、人の居住の用に供するために『独立的に区画された家屋』の部分又はその一部の数による(地方税法施行規則12条の2第1項)」と法令で定められていることを確認しました。
    その上で東京都は、本件家屋について、「家屋の中で各階を相互に行き来できる構造となっていることが認められ(中略)請求人(筆者注:納税者)も、処分庁(筆者注:都税事務所)の照会に応じて、本件家屋の1階と2階は建物の内部でつながっている旨回答していることが認められる。そうすると、本件家屋の各階は前述の『独立的に区画された家屋』にはあたらず、本件家屋の住居の数は、1戸と判断するのが相当」として、都税事務所の決定を支持しています。

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