法律相談

月刊不動産2008年2月号掲載

事業用借地権に関する法改正

弁護士 渡辺 晋(山下・渡辺法律事務所)


Q

事業用建物を所有するための定期借地権設定について、借地借家法が改正され、設定期間の制限が緩和されたと聞きました。どのような法改正があったのでしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1. 従来は、存続期間を10年以上20年以下とする事業用借地権を利用するか、あるいは、存続期間を50年以上とする一般借地権を設定しなければなりませんでしたが、法改正があり、平成19年1月以降、20年から50年の間を存続期間とする事業用借地権の設定もできるようになりました。

    2. さて借地借家法は借地人や借家人の保護を目的とする法律であり、借地契約の期間に関しても、借地契約が容易に終了しないよう、借地権存続が図られています。しかし借地借家法による借地人保護がいきすぎているという見方も強くなり、平成3年、契約期間が終了すれば必ず土地が返還される定期借地の制度が導入されました。

    3. 定期借地の制度には、(1) 一般定期借地権、(2) 建物譲渡特約付借地権、(3) 事業用借地権、の3つがあります。

    (1) 一般定期借地権

     本来、借地借家法では、契約を更新をしない特約は、借地人に不利な特約として無効ですが、存続期間を50年以上とする借地契約を締結するに際し、①契約の更新がない、②建物の築造による期間の延長がない、③建物買取りの請求をしない、という3つをセットとする特約(3点セット特約)を付けた場合には、この特約は有効とされます(借地借家法22条)。契約期間を50年以上として3点セット特約を付けた借地契約が、一般定期借地です。

     一般定期借地には建物の用途に制限はありません。マンションや一戸建てなど住居系に加え、オフィスビル、商業施設、ホテルなど事業用建物の所有を目的とする借地契約についても、設定が可能です。

    (2) 建物譲渡特約付借地権

     借地契約締結に際し、借地権設定後30年以上経過した後、借地上の建物を譲渡することを特約として取り決めておくのが、建物譲渡特約付借地権です。この特約に基づく譲渡がなされたときに、借地権は消滅します。建物譲渡特約付借地権にも建物の用途の制限はありません。

    (3) 事業用借地権

     50年未満の存続期間でも、専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、公正証書によって契約をすることによって、契約期間が満了したときに土地が必ず返還されるものとするのが、事業用借地権です。
     事業用借地では、借地上の建物は事業専用の建物に限定されます。マンションはもちろん、有料老人ホームや従業員用の寮など居住用の要素がある建物の建築を目的とする事業用借地を設定することはできません。

    4. 事業用借地権に関する法改正

     ところで事業用借地権については、従来、契約期間を10年以上20年以下として設定しなければなりませんでした。
     契約期間が限定されていたのは、事業用借地権の利用が、郊外型レストランや遊技場など事業計画期間を20年までとする業種に集中していると判断されたからでした。
     しかし現在では土地利用の在り方が多様化し、商業施設、レジャー施設、物流センターなど計画期間が20年を超えるものの、さりとて50年以上の利用はしないという事業も多くなり、20年超50年未満の借地契約の必要性が強くなってきました。
     そのため今般、借地借家法が改正され、50年までを存続期間とする事業用借地権の設定もできるようになりました(平成19年12月14日成立、同月21日公布)。
     新たな借地借家法の条文では、存続期間を30年以上50年未満とする借地権設定は、一般定期借地権と同様に3点セット特約の有効性を認めるという構成とされ(借地借家法23条1項)、存続期間を10年以上30年未満とする借地権設定は、借地借家法の存続期間保証に関する法の規定が適用されないという構成となっている点にも留意しておく必要があるでしょう(同条2項)。
     なお事業用借地権の設定契約は公正証書によって行う必要があることは、改正後にも変更はありません(同条3項)。
     改正法は、平成20年1月1日から施行されています。

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