売買仲介営業
月刊不動産2019年9月号掲載
中古仲介時に最終粗利をアップさせる方法
小寺 伸幸(株式会社船井総合研究所 不動産グループマネージャー シニア経営コンサルタント)
Q
毎年少しずつ販促費用が高くなっている一方で、地方であるため仲介手数料が安く、営業利益が毎年ほとんど出ません。このまま売買仲介だけでやっていけるのか不安です。利益を上げるためにはどのような対策を取っていけばいいのでしょうか?
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
-
回答
弊社では客単価を上げる対策として中古仲介時にリフォームを付加する中古+リフォーム業態を立ち上げるよう支援しています。地方では仲介手数料が50万円以下になることが多いのですが、中古仲介時にリフォームを付加することで営業生産性の向上につなげることができます。
-
1. 中古住宅販売のビジネスモデル
利益を上げるための対策として、船井総研が提案している中古+リフォーム業態のビジネスモデルについて解説します。
中古+リフォーム業態に特化した形で本格的に検討されている方は、ぜひ業態をそのまま専門店化したほうがよいでしょう。つまり、中古住宅専門店(中古マンション専門店)の看板を掲げて、中古物件を探しているお客様をメインに集客できるマーケティングフローを構築したほうが
圧倒的に成果につながりやすいです。とはいっても、なかなかそうはいかないという会社が多いと思いますので、ここからは専門店化しなくても中古仲介時にリフォームを付加できるような対策をどうやって図っていくのかをご説明いたします。中古仲介時にリフォームを付加することで営業生産性は約2倍になっていきます。具体的な内容は図をご確認ください。
具体的に実施する内容は4つです。①案内時にリフォーム提案・リフォーム見積もりできるような環境を整える。②リフォームの請負をした場合、しっかり利益が残るよう事前にリフォーム実行予算を作成しておく。③リフォーム後のイメージ付けを行う。④売買契約とリフォームの請負契約を可能な限り同時に契約する。 -
2. 案内時にリフォーム提案・見積もりをできるような環境を整える
案内した物件で、お客様がリフォームしたい部位に対して、リフォームした場合の概算を営業担当者が伝えられないと、案内後に買付をすぐにもらうことができず、見積もりを待っている間に他社に買付を入れられることは少なくありません。このため、物件予算+リフォーム予算+諸経費がお客様の予算に収まっているのかをつかみ、物件案内中にリフォーム提案・積算を同時に行うことが重要といえます。
-
3. 事前にリフォーム実行予算を作成しておく
リフォームを自社で請負契約をして工事完了後の入金額を見ると粗利率20%を切っていた、ということは少なくありません。営業担当者にとってリフォーム提案をして契約できたのに個人評価につながらなければ、積極的に提案をすることを怠ってしまいます。このため、リフォームを請負契約すると、営業数字としてどのくらいの評価をするかを会社として決めておく必要があります。目安としては300万円のリフォーム請負契約ができると仲介手数料以上の数字で評価することをおすすめします。ですので、契約した際のリフォーム実行予算(材料費と施工費の原価を出し、売価も設定しておく)を決めておくことが重要です。
-
4. 中古物件をリフォームした場合のリフォーム後のイメージ付けを行う
対応が可能であれば、店舗内にリフォームした場合のLDKのモデルルームを常設すると、お客様が来社した当日にリフォームのイメージ付けを行うことができ、早期にリフォーム予算を確保できます。そうはいってもスペースや資金的なことからモデルルームの常設が難しい場合は、再販の物件を案内します。そうすることで、築古物件でもリフォームすれば新築と同等にキレイになることを訴求できます。リフォームのイメージ付けをするかしないかでリフォームの請負単価とリフォームセット受注率は断然異なってくるため、イメージ付けはとても重要な要素です。
-
5. 売買契約とリフォームの請負契約を同時契約
失注や相見積もりを避けるには、できるだけ売買契約とリフォーム請負契約を同時に契約できる状態にすることが大切です。中古戸建ての場合は見積もりを売買契約時に間に合わせることは難しいと思いますが、ここをクリアすると、高粗利確保、他社競合を避けることができるため、契約までのスピードを意識することが必要となります。
以上の4点をしっかり押さえて、中古物件にはリフォームを付加させ、仲介手数料にプラスして粗利を確保していきましょう。【今回のポイント】
●中古住宅専門店として、中古物件を探しているお客様をメインに集客できるマーケティングフローを構築する。
●中古物件の案内にはまずリフォームを提案する。
●営業がリフォームを提案しやすい環境を整える(積算ツールやリフォーム商品のパック化)。
●リフォームの請負をした場合に粗利率が大きく下振れしないために、リフォーム実行予算をあらかじめ作成しておく。
●再販物件に誘導して、リフォームのイメージ付けをする。
●売買契約とリフォームの請負契約を同時に契約できるようなスケジュール管理をする。